カハス湖群とパレドーネス遺跡群
Lacs du Cajas et Ruines de Paredones


国名 エクアドル
分類 複合遺産
所在地 首都キトの南およそ500km


審議歴
2003年 暫定リストに記載。
2004年

辞退 … エクアドル政府は登録基準(3)(7)(8)(10)のもとで推薦していたが、ICOMOS、IUCNより「不登録」勧告を受け、辞退した。
IUCNは、本物件は世界遺産としての登録基準を満たしていないと判断した。エクアドル政府の推薦書によると、基準(7)は氷河をいただく山地であるとして適用されているが、同様の山地はアンデスでは一般的で、世界遺産として評価できる唯一性は認められない。(8)について、エクアドル政府は氷河地形や湖、滝などをあげているが、これらはほかの高山でもみられ、すでに世界遺産に登録されているものもある。(10)については、エクアドルにおける生物多様性の保全上重要な場所だが、種数や保護区内の固有率などは比較的低く、基準の適用は認められない。
またICOMOSは、本物件でみられるインカ古道や遺跡などは重要なものとしながらも、パレドーネス遺跡単独では、顕著な価値を証明することが難しいと判断。ペルー、ボリビア、チリ、アルゼンチンとの5カ国共同での保全・管理・調査を進めることを勧告した。


解説/文=収斂さん

インカ古道沿道の遺跡群

  パレドーネス遺跡群(Paredones ruins)は、カホン・タンボ(Cajon Tambo)という小さな村の近くで発見された遺跡だが、インカ帝国時代はもちろん、それ以前の文明であるプレ・インカ時代にも使われていた古代の商業ルート遺跡の顕著な例の一つである。この古代の商業ルートはやがてインカ古道(Incan trail)の一部に組み込まれた。パレドーネス遺跡群の中でもタンボ・パレドーネス(Tambo Paredones)という巨大な石造構造物は有名である。ただしトゥパク・ユパンキ人(Tupac-Yupanqui)という古代の民族によって建てられたものであること以外、詳細はまだ不明である。
  パレドーネス遺跡群とインカ古道との関わりは未知のところがあまりに多く、研究はこれからである。インカ古道は、エクアドルはもちろん、南米大陸の太平洋岸に多く建設され、その規模は古代ローマ帝国の街道(代表例はアッピア街道)や、モンゴル帝国の駅伝制(ジャムチ)にも匹敵する壮大なもので、世界遺産運動も起きている。しかし現在までのところ、インカ古道の正確な起源や総延長距離などは不明である。なお、パレドーネス遺跡群にあるインカ古道は、およそ500年前に建設された。この道はいまでも、現地に住むカナリ(Canari)人にとっては「聖なる場所へ続く道」という意味があるという。


氷河の水が干潟をうるおす

  カハス国立公園(Cajas National Park)は、インカ帝国の北の中心地クエンカ(Cuenca)から北に33キロの位置にある湖沼群で、氷河からの水がつくったラグーン(干潟)が230以上も点在している。海抜は3000〜3900メートルもあり、現在はアウトドア主体の観光地化が進んでいる。ここは高所のため気温の変動が激しく、またラグーンという特異な環境のために、世界的にも希少な動植物が多く見られる。
  その中でもカハス湖は、標高3500メートル以上の場所の湖として南米屈指の大きさであり、紀元前1500年以上も前から商業・交通の要衝だったことを示す遺物が発見されている。なお、インカ帝国時代の古道もこのカハス湖に通じている。



参考サイト
http://www.latintrails.com/destinations/Ecuador/Ecuador-Inca-trail-to-Ingapirca.htm
http://www.amazonadventures.com/ingapirca.htm






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