解説
ほとんど知られていないが、カネム=ボルヌ王国はおよそ1000年間も王位を継承しつづけた国であり、それは世界でも有数の長さをほこる王朝といえる。国が興ったのは9世紀のチャド湖東岸で、いくつかの遊牧部族が1人の統率者にまとめられたという。はじめ定住地をもたなかったが、チャド湖の周辺を活動範囲としていた。ときを経るごとに国は町をもつようになり、チャド湖の南側へ進出するようになった。しかし行く先では先住部族との争いも絶えず、国は次第に衰えていった。
ビルニ・ガザルガム(ビルニン・ガザルガモ)は、カネム=ボルヌ王国の首都として15世紀後半、ときの王アリ・ガジによって築かれた。王は攻め寄せる他部族から、最後まで町を死守したといわれる。また王はイスラム教を取り入れた国づくりを行い、王国に再度の繁栄をもたらした。
ビルニ・ガザルガムは周囲を高さ6mの土壁で囲まれており、その範囲は直径28kmもある。町にはレンガづくりの宮殿建築が残されているが、庶民の家は草や泥でつくられていたと思われ、何も残っていない。ビルニ・ガザルガムはフラニ族に攻め落とされる1811年までの340年間、王国の中心であり続け、それは当時アフリカで最も大きな町であったと推測される。
参考文献
『ナイジェリアその人々と歴史』 マイケル=クローダー、グダ=アブドゥラヒ著、中村弘光、林晃史訳、帝国書院、1983
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