解説/文=収斂さん
200万年間の紅海の気候変動を記録する
ラス・モハメド国立公園はエジプトで最初にして唯一の国立自然公園である。この公園が1983年に指定された当時の公園面積は、たった97平方キロだった。しかしそれ以後、公園面積が徐々に拡大されていき、現在では、ティラン島(Tiran)とラス・モハメド半島(the
Ras
Mohammed
Peninsula)、およびその周辺の海洋を含む、480平方キロである。
この公園では昔の海岸線の痕跡を示すサンゴ群生地の化石が多数発見されており、当時の地球環境や気候変動を知る重要な手がかりとして、最近とくに注目されている。時代はいまから1万5000年前から200万年前である。現在確認されている化石のサンゴの種類は、ハマサンゴ属(Porites)やコカメノコキクメイシ属(Goniastrea)、Galazea属の仲間などである。また、
最も新しいサンゴの化石は、この公園に現生するサンゴとほぼ同じ種類であることが、調査の結果すでにわかっている。
世界最高水準のサンゴの研究・保護体制
ラス・モハメド国立公園ではサンゴとの共生を実現するため、周辺の環境保護を徹底している。そのためサンゴの生態系の研究・観察・保護では、ラス・モハメド国立公園は世界最高水準といわれている。魚類の種類も豊富で、毒をあるとげをもつダムセルフィッシュ(Damselfish:スズメダイ科)、
海藻をエサにし、サンゴ礁に生息するブダイ類(Parrotfish)などが一般的だ。
またサメやバラクーダ(barracuda:カマス科の大型の魚)などの大型魚類も多く生息しており、中東で屈指の自然保護区である。さらに、そうした大型の魚のウロコやエラの寄生虫を掃除するクリーナーラス(Cleaner
wrasse:ベラ科)も普通にみられ、生態系の豊かさが証明されている。
公園内の陸地にも動物が多く生息している。ただし砂漠に似た乾燥地帯なので、種類は限られる。アカギツネ(Red
Fox)のようなキツネは公園内に多く生息しており、とくに春には、日没のころヨランダビーチ(Yolanda
Beaches)一帯でよく見られる。またヌビアアイベックス(Nubian
ibex:ヌビア地方に生息するアイベックスで野生のヤギの仲間)も有名だが、最近は数が減っている。そのほかヘビやトカゲのような爬虫類、昆虫も多い。
公園は鳥類にとっても貴重な生息地である。代表的なものはサギの仲間で、アオサギ(gray
heron)、オニアオサギ(goliath
heron)、アフリカクロサギ(reef
heron)などである。カモメとアジサシは、Hidden湾の海岸やスエズ湾の入り江付近でふつうに見られる。またミサゴ類(Osprey:魚をエサにするタカの仲間)は、少なくとも5種が確認されている。ティラン島一帯は紅海で最大のミサゴの繁殖地である。夏の終わりには東アフリカから数千羽のシロコウノトリ(White
Stork)が飛来する。
参考サイト
http://www.touregypt.net/parks/ras_mohammed_national_park.htm
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