ミンケベの生態系と文化的景観
Ecosystem and Cultural Landscape of the Minkebe Massif


国名 ガボン
分類 複合遺産
所在地 首都リーブルビルの北東およそ300km


審議歴
2003年 暫定リストに記載。
2004年 審議対象外 … 書類不備のため審議対象外。
2005年 情報照会 … 本物件は複合遺産として推薦されたが、そのうち文化遺産としては登録基準を満たしていない。自然遺産としては、とくに基準(9)(10)の該当理由を明示すること、採鉱活動に関連する保全状況や潜在的な脅威を明らかにすること、カメルーンおよびコンゴ共和国と協力し、3カ国にまたがる遺産として推薦範囲を拡張できないか考慮すること、などが求められた。


解説/文=収斂さん

密猟問題に直面する世界屈指のゾウの保護区

  ガボンの北東に位置する、面積3万2260平方キロの広大なサバンナおよび熱帯雨林地帯。その保護のため、2002年に指定された新しい国立公園が、ミンケベ国立公園(Minkébé National Park)で、熱帯雨林の中核部分7,560平方キロが国立公園として指定されている。いまとなってはこの広大な公園内に人間はほとんど住んでいないが、植民地化される以前(pre-colonial times)には人びとが生活していた記録や痕跡がいくつも残っている。それは、植民地時代(the colonial era)に、欧米の白人たちが、こうした不便な場所に住む村人たちをもっと便利な土地に移住させた結果だが、その結果、当時の村人たちの生活遺構がそのまま保存されており、ミンケベ国立公園が文化的景観でも世界遺産化を目指している理由となっている。

  今日、ミンケベ国立公園周辺には期間限定の狩猟用のキャンプができたり、金鉱脈が公園周辺で発見され、大規模開発が公園のすぐ近くまで迫っているという諸問題も起こっているが、最大の問題はガボンと隣国のカメルーン南部に住むバカ族(Baka pygmies:ミンケベ国立公園の北に接するように住む部族。一般的なアフリカ人より体格がやや小さいのが特徴)が、象牙をねらって公園内に生息するゾウの密猟行為を繰り返していることである。ミンケベ国立公園は、世界でも屈指のゾウの生息地であるばかりでなく、大型哺乳類が多く見られる貴重な場所だが、主に公園北部で繰り返される密猟被害は年々深刻になっており、大きな国際問題になっている。そのためWWF(World Wildlife Fund:世界自然保護基金)がガボン政府と協力して、主にゾウの保護に乗り出している。


驚くべきゾウの生息密度が調査で明らかに

  具体的には、公園北部とその外側の地域にMIKEゾウ目録ゾーン(MIKE elephant inventory zone)という、総面積9,319平方キロの緩衝地帯を設け、人間の影響が直接公園内におよばないようしている。ここでは2003年8月〜04年6月の10ヶ月間、ガボン政府とWWF合同でゾウの生息数の調査が行われた。この調査ではゾウの糞の個数調査や、サルなどの営巣地調査が行われ、調査の結果、1平方キロ当たりのゾウの糞の個数は、公園外で4807個/km2であるのに対し、人間の影響が中程度におよんでいる公園北部では4981個/km2、ほとんど人の影響がない公園内では6498個/km2という結果が得られた。

  しかし、サバンナや熱帯雨林地帯では、野生動物の糞は昆虫に食べられるなどして早く消滅してしまうこともあり、この調査結果には誤差や疑問も多く指摘されている。また、公園と緩衝地帯ではこれまで2万9146頭のゾウが確認されているが、ミンケベ国立公園内にはそのうち2万2678頭が生息しているといわれ、緩衝地帯と公園内を自由に行き来するゾウの行動をすべて調査するのは難しいという意見もある。ただし、この調査結果から少なくともいえることは、ミンケベ国立公園は中央アフリカの保護対象地域で、最もゾウの生息密度が高い公園であることである。ミンケベ国立公園の世界遺産化は、上述のような象の保護対策の一環として行われている。



参考サイト
http://www.wcs.org/international/Africa/africanelephants/MIKE/MikeGabonMinkebe





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