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Photo credit:Turkey in Pictures |
解説/文=収斂さん 断崖にへばりつく中世の修道院
スメラ僧院は、トルコの黒海岸の街トラブゾン(Trebizon)から車で1時間くらいのところの、標高1,200m以上の高地にある。この僧院は
St.Paul
を祭るため、4世紀ごろに建設された。はじめは岩の割れ目を祈りの場としていたが、その後規模を拡大していく。現在の建物は13世紀のもので、その後数回修復された。僧院は断崖にへばりつくように建てられているばかりでなく、場所によっては、断崖からせり出している部分もある。そして眼下の渓谷の緑との対比がとても美しく、ギリシャのアトス山やメテオラとならび称される奇観を楽しめる。
スメラ僧院の近くは、オスマン・トルコ時代にもポントス人と呼ばれたギリシャ系のキリスト教徒が住んでいた場所で、彼らにとってここは最も重要な僧院の一つだった。しかしギリシャ=トルコ戦争(the
Greco-Turkish
war)の勃発で、1929年に僧院の多くが破壊され、木造部分が焼失した。なおこの修道院には、「トラブゾンのマリア」と呼ばれた聖母マリアのイコン画の傑作があった。これは7世紀ごろ(一説では10世紀ごろともいわれている)描かれたものだが、伝説によれば、この聖母のイコン画は、アテネから天使に導かれて地中海を渡り、Zigana山の頂上にたどり着いたものだという。しかし現在このイコンはスメラ僧院にはない。この絵は20世紀はじめの騒乱で、ひそかにギリシャのテッサロニキへ運び出されたのだった。そしてその場所で、いまも篤い信仰の対象になっている。 |