解説/文=収斂さん
モルジブでは2000年以上前から、建築資材としてサンゴが利用されてきた。サンゴは、石をほとんど産出しないモルジブでは貴重な建築資材であり、イスラム教が伝わる前の、プレ・イスラム時代(the
pre-Islamic
era)でも、サンゴで寺院が建てられたり、仏像が彫られたりした。またサンゴで建設された井戸や沐浴場も数多く残っている。
サンゴの加工や彫刻の技術は、12世紀のイスラム教伝来後に飛躍的に進歩し、モスクや墓石にその技術が活用された。モルジブのモスク(モルジブではモスクをミスキー[Miskiyy]とよぶ)などの装飾には、対称性のある花弁紋様が多く見られる。こうした美しい花弁紋様の施されたモスクとしては、首都マレ(Male)のフクル・ミスキー(金曜モスク[Friday
mosque])や、Eidhu
Miskiyyも有名だが、フェンフシ島のアリ(Ari)にあるフェンフシ・ミスキー(Fenfushi
Miskiyy)は、そのなかで最も有名である。建物はあまり大きくはないが、壁に彫られた精緻な花弁の装飾は、イスラム様式とモルジブの古い様式の融合とされている。
ただ残念なことに、
今日ではサンゴ礁保護を理由に、建築資材にサンゴを利用することがほとんどできなくなった。そのため、寺院の修復などには輸入した石材を使用するケースが多くなっており、文化財や伝統技術の継承が困難になっているという問題を抱えている。
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