ダイル・エルカマルとベイト・エディーン (1984年の推薦名)
Deir el-Qamar and Beit Ed-Dine

シューフ地域の一連の自然遺産ならびにその記念物群や遺跡群 (2001年の推薦名)
The Entire Natural Site of the Region of the Chouf with its Monuments and Sites


国名 レバノン
分類 文化遺産
所在地 首都ベイルートの南南東およそ20km


審議歴
1984年 不登録 … 顕著で普遍的な重要性がない。
1996年 暫定リストに記載。
2001年 登録延期 … 顕著で普遍的な重要性の証明が必要。また、管理計画にも不備があるため審議を延期する。


解説/文=収斂さん+浦に〜と

レバノンでもっとも優雅な宮殿建築

  本物件は1984年、「ダイル・エルカマルとベイト・エディーン」として世界遺産に推薦された。このうちベイト・エディーンは、レバノンのほぼ中央にある宮殿建築で、18世紀後期から50年以上を費やして完成した。レバノンでもっとも優雅な宮殿といわれ、当時を代表する中東建築である。著しい創造性を見いだせる出窓、多彩色のモザイクによる床の舗装など、いたるところに凝った装飾をもっている。
  ダイル・エルカマルは、ベイト・エディーンから5kmほどのところにあり、ベイト・エディーンが築かれるまで、この小村に太守の居地があった。当時の宮殿跡のほか、赤い屋根を頂いた石造家屋やモスクが点在し、レバノンの典型的な集落の景観が広がる。
  1984年の推薦物件は「不登録」との評価が下されたが、レバノン政府は2001年、推薦範囲を周辺の自然遺産にまで拡張し再推薦。このシューフ地域を特徴づける自然遺産が、レバノン杉だ。


国際的に保護されたレバノン杉の群落

  レバノンの国土は大部分が砂漠や荒涼とした大地だが、それでも中東地域の国々のなかでは、最も緑が多く残っている国とされている。そのレバノンを象徴するレバノン杉の森は、「カディーシャ渓谷と神の杉の森」として、すでに1998年に世界文化遺産に登録されている。しかしシューフ山脈(Chouf Mountains)一帯にも、わずかではあるがレバノンが自生している。だがすでに森と呼べるほどの規模はなく、小さな群生地でしかない。それでも、こういった場所は、もう数えるほどしか残っていないのだ。
  1994年、レバノン政府は、当時の内閣のワリド・ジュンブラットの提唱によって、シューフ山脈の環境保護を目的とする Society for Arz El-Chouf と呼ばれる組織を発足させた。そしてシューフ山脈のレバノン杉が国際的に保護されるように活動を始めた。対象となる保護地域は、シューフ山脈とその近隣にある以下の3つの地域である。

・バルークの森……この森はシューフ山脈からバルーク(Barouk)山脈の西斜面一帯にあり、比較的良好に保護されている。面積は約1平方キロ。
この森にはレバノン杉のほかにも、手つかずの古い木々が数千本ある。

・Ain Zhaltaの森……シューフ山脈にあり、面積は約1.1平方キロである。保存状態は良好である。最近レバノン杉の苗木を植林して、積極的に回復に努めている。

・Maasar El-Choufの森……ここはシューフ山脈から少し離れたところにあり、面積は6haと、きわめて狭い。この森は周囲を厳重なフェンスが取り囲み、許可がなくては中に入れない。そのおかげで保存状態は良好である。



参考資料
『シリア ヨルダン レバノン ガイド』 ミルトス編集部著、ミルトス、1997
http://www.lonelyplanet.com/destinations/middle_east/lebanon/environment.htm






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