解説/文=収斂さん
ハリ・マンディル寺院(Hari
Mandir)はシーク教(the
Sikhs)の最高聖地にして総本山の寺院で、パンジャーブ州(Punjab)にある。この寺院は別名、黄金寺院(Golden
Temple)と呼ばれる有名なもので、なぜいままで世界遺産になっていないのか不思議なくらいである。
パンジャーブ州の歴史は古い。もともとインダス川の名称はパンジャーブ州での現地語であるシンドゥ川だったが、これがペルシャ語でヒンドゥ、ギリシャ語でインドスとなり、それが英語でインディアになった。パンジャーブとはインダス川上流域の5つ支流を指すパンジャーブ(五河)に由来する。第二次世界大戦後、インドとパキスタンが分裂するとき、この肥沃なパンジャーブは東西に分割され、西がパキスタン領パンジャーブ州、東がインド領パンジャーブ州とハリャーナ州になった。
シーク教(シク教ともいう)は16世紀に初代教主(グル)のナーナク(Guru
Nanak)が創始した新しい宗教で、インドでは新興宗教に近いものとして見なされている。教義は、ヒンドゥ教とイスラム教が融合した一神教崇拝で、カースト制度を否定した平等思想と、神への信愛(バクティ)が特徴である。信徒は髭とターバンを身にまとう。
ハリ・マンディル寺院(Hari
Mandir)
ハリ・マンディル寺院は「神の寺院」という意味である。この寺院のある場所は、第4代グルのラーム・ダース(Guru
Ram
Das)の時代にシーク教の聖地とされ、第5代グルとなったラーム・ダースの息子アルジャン・サヒーブ(Sri
Guru
Arjan
Sahib)によって、1589年に寺院として整備された。その後、隣国との戦争で破壊され、現在の建物は1764年に、後期ムガル様式を踏襲して再建された。なおこの寺院の建築の設計図は現存せず、寺院の詳細は不明なところが多い。
寺院は小さな本殿と池とそれを取り囲む回廊のような建築で構成されている。本殿は120m×150mの池の中央に浮かぶように建っており、池の広大さと比べると小さく見えるが、池と一体化した景観は見事である。この池はアムリタ・サロヴァル(甘露池:Pool
of
Nectar)といい、現在の街の名(アムリットサル)の由来にもなった。さらに1802年に本殿の屋根と側面上段をすべて金箔でおおい、迫力と壮麗さが増した。また本殿に行く橋の入り口にある2階建ての門にも、黄金が張られている。
本殿側面下段は精緻な装飾入り白大理石でつくられ、池の周囲の回廊状の建築もほとんどが白大理石でできている。本殿の黄金と大理石の白、それに池の水のコントラストは驚嘆すべきものである。本殿は上から見ると長方形をしており、四方それぞれに入り口がある。これは、貴賎にとらわれず、すべての人に開かれた神の家(House
of
God)であるという宗教的意味がある。
なお、この寺院では1984年にシーク教徒反政府勢力と政府軍が銃撃戦を行い、弾痕がいたるところに残っている。
参考サイト
http://www.sikhnet.com/GoldenTemple
http://www.sikhs.org/golden/
http://www.srigurugranthsahib.org/featured/harimandir.htm
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