解説/文=収斂さん
1.地形の特徴
イシク・クル湖(Lake
Issyk-Kul,
ロシア語ではOzero
Issyk-Kylと書く)は、キルギスタンの北天山山脈(the
northern
Tien
Shan
mountains)にある巨大な湖で、湖の外に流れ出る河川をもたない。湖は長さ182キロ、幅61.2キロ、面積は6,332平方キロもある。湖は標高1,608メートルの高地にあり、最深度は702メートル、体積は1,738立方キロとされる。高地にあるにもかかわらず冬でも凍結しないため、地元では昔から「温かい湖」と呼んでいた。それが湖の名前の由来にもなっている。
イシク・クル湖は地質学的にもユニークで、最初の科学的な調査は1856年に行われた。調査結果はロシア人地理学者
P.
P.
Semyonov
Tyan-Shansky
によって発表されているが、彼はこのときイシク・クル湖河岸一帯、およびチュー川(the
Chu
River)との関連についても調査を行っている。調査の結果、イシク・クル湖は少なくとも700万年以上前から存在していた古い湖であることが判明した。また、周期的に干上がっていた可能性も判明した。その証拠に、湖の周りの土手には「湖の段々」(Lake
terraces)という階段状のうねが見られる。これは大昔の湖面が、現在よりもはるかに高かったことを意味している。
一方、湖面から最大7メートル下の水中からは数百年前の住居跡が発見されており、当時の湖面がいまよりも10メートルくらい低かったこともわかっている。年間を通しての水位の変動(Seasonal
fluctuations
of
the
level)は、夏場に大量の雪解け水が河川から流入するため、30〜50センチとされているが、20世紀になってから湖の水位は3メートルも下がっている。
現在のイシク・クル湖周辺の気候はやや乾燥しているものの温暖で、7月の気温は平均して17℃前後、1月は湖西部で平均して−2℃前後である。湖には50以上の河川が流れ込んでいるが、それらの多くは湖の東端と西端に集中している。水温は7月は20〜23℃、1月は2〜3℃である。
凍結は浅い流域部でしか見られない。
2.生物学的特徴
イシク・クル湖の水は透明度が約20メートルもあるが、塩分を含んでいるため飲料や灌漑には適さず、わずかに家畜の飲料水として利用されている。湖の西側の斜面は岩だらけで草木がまばらに生えているだけで、塩分を多く含んだ不毛の土地である。一方、東側にはステップ性気候のため草原が広がっており、ニレ科(elm)の樹木も点在している。湖に隣接する山岳地帯の上層部にいくと、高山性植物の草原(subalpine
and
alpine
meadows)も見られる。また、テルスケイ・アラタウ(Terskey
Alatau)山地の北側斜面には、モミ科(fir)の森が広がっている。
イシク・クル湖には20種類以上の魚類が生息している。こうした中で食用に捕獲されているものは、ソマン(soman)、チェバック(chebak)、マリンカ(marinka:パミール高原一帯の標高3,900メートル以上の池や川に生息する魚で、全長50センチ以上、重さ2キロにもなる)、コイ(carp)などである。
イシク・クル湖には毎年多くの渡り鳥が飛来する。ただし湖の東西で渡り鳥の種類に違いが見られる。主なものはマガモ(mallards)、オオバン(bald
coots)、コガモ(teals)、ホシハジロ(pochards)などである。
3.文化的特徴
中央アジア一帯、特にイリ川(the
Ili
river)周辺には古代の岩石彫刻(petroglyphs)が多く見つかっているが、イシク・クル湖周辺でも多数見つかっている。主なものとして、チョルポン・アタ(Cholpon
Ata)にある岩石彫刻が有名である。
4.その他
1970年代初頭まで、イシク・クル湖周辺にはおよそ30万人もの人々が住んでいた。そのほとんどがキルギス人とロシア人で占められ、ウクライナ人、タタール人(モンゴル系)、ウズベク人も少なからず含まれていた。イシク・クル湖周辺にある大きな町はカラコル(Karakol)とバルクチュ(Balukchu)の2つだけだが、そのほか数百の小さな村が点在する。湖には物資運搬として重要な定期航路もある。
現在、イシク・クル湖はリゾート地として観光客誘致を積極的に行っている。とくに湖の北側のチョルポン・アタの町を中心としたエリアには、70年代中ごろから多くの保養施設が建設されている。こうした施設には中央アジアやロシアから多くの観光客が訪れている。
参考ウェブサイト
http://members.tripod.com/~AKISHEV/index-2.html
http://expat.nursat.kz/?2218
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