解説/情報提供=収斂さん
多くの湖が点在する北アイルランド南西部、アーン湖地域。ロワー・アーンとアッパー・アーンの二つの湖を中心とするこの地域には、多くの古代宗教遺跡が残されている。初期キリスト教時代、湖は重要な交通路であり、教会や修道院へ向かう巡礼が行きかっていた。この辺りの遺跡で最も注目されるのが、デヴェニシュ(Devenish)島の修道院遺跡である。
デヴェニシュ島には現在、二つの教会と一つの礼拝堂、そして1本の円塔が残されており、島の南東端の丘の斜面に建っている。この修道院の起源は6世紀、聖Molaiseが創設したことに始まる。当時の修道院は開放的で、世俗的な書物の写本を頻繁に行っていたという。また子供を養育する施設としての役割をもち、修道院は宗教施設としてだけでなく、学校や客間、酪農・農耕地をも含んでいたのである。7世紀にデヴェニシュ島を訪れたある詩人が、「誰もを厚くもてなすアイルランドの家」と書きとめたほどである。
修道院にとっての脅威はヴァイキングだった。年代記によれば、836年、デヴェニシュ島は異教徒によって破壊され、また923年には、外国人の船隊がアーン湖に入り、湖上の島々や領土を奪ったとある。
現在の遺構はヴァイキング襲来後、12世紀に再建されたもので、アイルランドの修道院建築の特徴をよく伝えている。中心には円塔が建っているが、これは信仰のシンボルであり、また緊急時には宝物庫としての役割もになっていた。
デヴェニシュ島では二つの修道院が機能していた。聖メアリー大寺院、15世紀アイルランドのゴシック建築の特徴を示す。修道生活は1603年、イングランドの影響で終止符を打ち、間もなく島もサー・ジョン・デイヴィス(Sir
John
Davies)の所領となった。墓地だけは19世紀まで維持されていた。
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