湖水地方国立公園 (1987年の推薦名)
Lake District National Park

湖水地方 (1990年の推薦名)
Lake District


国名 連合王国
分類

複合遺産

所在地 イングランド北西部。カーライルの南側一帯


 

   

審議歴
1985年 暫定リストに記載。
1987年 登録延期 … ICOMOSは登録基準(2)(5)(6)の適用を認めたことが、IUCNは、「この遺産は本当に『自然』遺産といえるのだろうか」と、登録可否の結論が出せないでいる。
世界遺産委員会では、「文化的景観の登録に関する見解が明確にされるまで、この遺産の登録審議は延期したほうがよい」という結論に達した。
1990年 登録延期 … 世界遺産委員会は、この種の遺産登録にあたっての十分な登録基準がないことを指摘した。「文化的景観」という概念に適切な登録基準がないことを指摘したわけだが、それは委員会が数年来、懸念してきたことである。この件に関しては来年の委員会までに結論が出る予定なので、本物件の審議も来年以降に延期する。



解説/文=
収斂さん+浦に〜と

ナショナルトラスト運動の発祥地

  「湖水地帯」とはイングランド北西部、標高977mのスコフェル山を中心とした風光明媚な一帯の総称。2,280平方kmの範囲が、1951年国立公園に指定された。なだらかな山々、イングランド最大のウィンダーミア湖をはじめとする大小17の湖、そして古くからの田園風景など、100年以上前の風景がそのまま残っている。
  では、なぜこの田園風景をそのまま維持できたのかというと、18世紀にここに住んでいた一人の牧師が、産業革命で美しい自然が損なわれていくのを憂慮し、貴重な自然が残る地域を少しずつ買い取っては、そこを開発から守ったからである。彼と彼の賛同者が始めた、この政府に頼らない自然保護運動こそ、現在のナショナルトラスト運動のはじまりであり、やがてこの運動は世界中に広まった。つまり湖水地方は、ナショナルトラスト運動の発祥の地なのである。そのためいまも湖水地方では、舗装道路や現代的なものは、生活上必要最低限のものしか設置しないなど、徹底した自然保護が行われている。


多くの作家・芸術家を魅了した風景

  湖水地方の美しい風景は、画家、詩人の多くの感性を刺激してきた。湖畔詩人のワーズワース(Wordsworth, 1770-1850)やコールリジ(Coleridge, 1772-1834)はこの地をこよなく愛し、すぐれた詩をつくった。
  また、湖水地方は、英国風庭園の原風景でもある。手を加えない自然そのままの作風の英国風庭園は、噴水と刈り込みと建築物の幾何学的な配置が特徴のヨーロッパ式庭園とは一線を画し、18世紀以降の英国に大きな潮流をつくった。なかでもワーズワース邸の庭はその典型であり、多くの人々が彼の庭を訪れる。
  またここ湖水地方は、ビアトリクス・ポターの「ピーター・ラビット」の舞台としても有名である。ポターは、自分が生きた時代の湖水地方の風景を、そのまま「ピーター・ラビット」の中に描いた。そしていまもその風景は、そのまま湖水地方に見られる。湖水地方は田園と世界遺産との関係を考慮するうえでの、一つのモデルとされている






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▲ウィンダミア湖
 写真提供=じょび。さん
世界遺産スクエア