解説/文=収斂さん
古代都市プーラはイストリア半島の海岸沿いにある。この町は、紀元前45年ごろにローマ帝国のユリウス・カエサル(ジュリアス・シーザー)によって建設された。ここには、紀元1世紀ごろに建設が始まり、およそ80年の歳月をかけてつくられたという巨大な円形闘技場がある。この闘技場は、ローマ帝国の初代皇帝アウグストゥスの業績をたたえるために、海を見下ろす高台に建設された。
闘技場の特徴は、まず建築資材としてイストリア半島産の白い石灰岩が使用されている点である。そのため建設当時は白く美しい競技場だったと考えられている。また規模も、72の窓と3段の観客席を備えた巨大なもので、最上段の高さは地上30メートルもあり、ローマ帝国最盛期の建築の白眉である。さらに、円形闘技場を見下ろす位置には、力の象徴としてのライオンの像が立っている。このライオン像は、長い時間を経て風化が進み、
細部は劣化し手足も紛失しているが、貴重な文化遺産である。
この円形闘技場の修復はかなり進んでいるといえるが、しかし必要以上に改造もされている。たとえば、闘技場の外周壁は完全に当時の規模で復元されているが、競技場内部は、ここを体育会場としても利用できるように、一部の場所を除いて人工的な客席などが設けられ、トラック競技用の芝生が植えられるなど、かなり改造されている。そのため、歴史的文化財を完全な状態で保存するという主旨に合致しているとは、必ずしもいえない。
(円形闘技場の外壁には明らかに色の違う石材で補修された箇所が目立つので、建物は近年までほとんどがれきの状態で存在し、最近になって復元されたものと判断したほうがよさそうです)。
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