解説/文=収斂さん
ホーヘ・タウエルン国立公園(Hohe
Tauern
National
Park)は、オーストリア最高峰のグロスグロックナー山(Grossglockner
mountain:3,798m)を含み、公園総面積は約1800平方キロである。この公園は、ヨーロッパ中心部にある自然公園のなかでも、広大な山岳自然が手付かずの状態で残されている最後の場所といわれている。山脈は氷河によって形成されているため、雄大な滝や湖が多い。中でもクリムル(Krimml)滝は有名である。
ここでは氷河時代の生き残りといわれる動植物も多く見られる。高地の動物ではヤギやヒツジが一般的で、中でもマウンテン・ゴート(mountain
goat)は、最も有名な動物である。また、山の中腹より下ではアイベックス(ibex:アルプス、ピレネー山脈に生息する野生のヤギ)、シャモア(chamois:南ヨーロッパから西アジアに生息するレイヨウの仲間)、シカが一般的だ。さらに鳥類も多く生息している。植物ではエーデルワイス(edelweiss)の仲間がとくに有名である。
それからホーヘ・タウエルン国立公園内には、伝統的な半農半牧生活をしている人たちがいまも暮らしている。彼らは厳しい自然環境に耐えるため、村落ごとに小さな共同体を組織し、質素に暮らしてきた。最近、自然と調和する彼らの生活が、オーストリアばかりでなく周辺のヨーロッパ諸国からも注目されている。そして伝統的な生活を体験するツアーまで組まれており、人気を博している。
グロスグロックナー山岳道路(Grosglockner
high
alpine
road,
Grosglockner-Hochalpenstr)
グロスグロックナー山岳道路は、長さ約50キロの高山道路で、2000メートル以上の高地に建設されている。なかでも標高2,576メートルのホッホトーア峠(Hochtor
Pass)は有名な峠である。この道路はオーストリアで最も景観が美しい道路として有名で、現在はもっぱら公園への観光道路として利用されている。なお、この道路の利用期間は5月〜11月で、それ以外は雪に閉ざされるため通行できない。
◇ ◇
ホーヘ・タウエルン国立公園が高く評価されている点は、自然環境ばかりでなく、日本の白川郷に見られるような村民の共同体組織がいまでも存在していることである。しかし公園の核心地域以外ではかなり観光地化が進んでおり、昔ながらの村落共同体はほとんど失われてしまっている。さらに冬はスキー、夏は登山目的でヨーロッパ中から観光客が訪れるため、自然保護の目的で世界遺産登録をめざしている可能性が高いと思われる。
参考サイト
http://www.kasbah.com/highlights/austria_hohe_tauern_national_park.htm
http://www.llbean.com/parksearch/parks/html/1641llt.htm
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