ハイデルベルク城と旧市街
Heidelberg Castle and Old Town


国名 ドイツ
分類 文化遺産
所在地 49゜25'00N 08゜41'60E (ドイツ南部。フランクフルトの南およそ80km)


審議歴
1984年 暫定リストに記載。
1994年以前 暫定リストより削除。
1999年 暫定リストに記載。
2005年 登録延期 … ハイデルベルク全体での顕著で普遍的な価値を示すこと。また、1870年代〜1900年代に議論された、ハイデルベルク城の「保存か復元か」の討論のもつ意義と、城そのものの主だった重要性を明確に示すこと。
2007年 登録延期 … ドイツ国内の都市のみならず、世界遺産に登録されているヨーロッパの歴史都市との比較検討を行うこと。有形遺産に見いだされる精神的価値など、目に見えない重要性を示すこと。


解説/文=好古学のすすめさん

1.位置と歴史

  古城と大学で知られるハイデルベルクは、ドイツ南部、バーデン・ビュルテンベルク州北西部の都市である。ライン川右岸の支流ネッカー川が、山地からライン河谷平野に出る谷口に位置する。
  ハイデルベルクは1196年に、ヴォルムス司教領の小村として史料に初出するが、13世紀にプファルツ伯(後に選帝侯)が居城地としてから発展した。選帝侯は1556年に新教に改宗したため、三十年戦争では1621年に皇帝軍の侵略を受けて町は大きく荒廃した。さらにプファルツ継承戦争でフランス軍の侵略を受け、1693年に市街の大部分と城の外郭などが破壊された。戦後1718年に、選帝侯は城の再建を始めたが、翌々年に中止して居城をマンハイムに移した。その後1803年にバーデン大公国領となり市街は復興したが、今日まで城の再建は行われていない。


2.ハイデルベルク城

  ハイデルベルク城は、ネッカー川左岸(南岸)のケーニヒシュツール山(566m)の山麓にある。現存する建物は、中庭を囲む16世紀を中心とする城館と、四隅などにある14〜15世紀の円形または多角形の塔である。外郭のほとんどは破壊されている。中庭の北側(麓側)の3階建(屋根裏を入れれば5階建)のフリードリッヒ館(Friedrichsbau, 1601-07)は、ドイツ・ルネサンス建築の傑作である。また、東側にある廃墟となった外観3階建のオットー・ハインリッヒ館(Ottheinrichbau, 1556-63)は、ドイツ・ルネサンス初期の好例である。内部には1958年にドイツ薬事博物館が設けられた。北西にあるファスバウ(Fassbau, 大樽棟)は観光名所で、最大の樽は約22万リットル入りである。


3.「復元ではなく保存」

  19世紀末から20世紀初頭にかけて、幾度か復元が提案されたが、美術史・建築史家のゲオルク・ゴットフリート・デヒオ(Georg Gottfried Dehio, 1850-1936)は、構造的に安定していることや、オリジナルの建物について十分な資料が残っていないことなどから復元案を批判し、「復元ではなく保存」を訴えた。この主張は文化財保護の原則の確立と普及に大きな役割を果たした。


4.旧市街

  ハイデルブルクの旧市街は、ネッカー川と南の丘陵にはさまれた東西に細長い土地にある。17世紀の戦禍を免れた唯一の建物である1592年建造のルネサンス式の「騎士の家」(Haus zum Ritter)を除けば、バロック式の建築が多い。ゴシック式の「精霊教会」(Heiliggeistkirche)は、1544年に完成したが、ファルツ継承戦争後に再建されたものである。
  また、ネッカー川に架かる塔門のある石造りの9連アーチ橋は、アルテ・ブリュッケ(Alte Brucke, 古い橋)と呼ばれる。1788年の完成である。


5.ハイデルベルク大学

  マイヤーフェルスター(1862-1934)の戯曲「アルトハイデルベルク」の舞台として知られるハイデルベルク大学は、1386年に創設されたドイツ最古の大学である。「アルテ・ウニヴェルジテート」(Alte Universitat, 旧大学舎、1712年改築)や、「ノイエ・ウニヴェルジテート」(Neue Universitat, 新大学舎)を中心に、市内に数多くの大学の建物がある。
  旧大学舎には1914年まで使われた学生牢(Studentenkarzer)が残されている。19世紀から20世紀にかけて、精神科学の中心大学としてヤスパースを中心とするハイデルベルク学派が活躍した。また、これまでに8名のノーベル賞受賞者が出ている。


6.その他

 (1) 旧市街にある「プファルツ選帝侯博物館」(Kurpfarzisches Museum)には、リーメンシュナイダーの十二使徒祭壇などの美術品や古図などの歴史資料のほか、1907年に近郊で発見された約55万年前のハイデルベルク人の下顎骨のレプリカ(実物は大学が保管)、新市街で発掘されたケルト時代、ローマ時代の出土品などの考古資料が展示されている。

 (2) アルトハイデルベルクの全景は、旧市街の対岸の山腹にある「哲学者の道」(Philosophenweg)から眺めるのがよい。



参考ウェブサイト
○ハイデルベルク市
 http://www.heidelberg.de/
 http://www.cvb-heidelberg.de/index_eng.html 日本語ページあり。

○ハイデルベルク城
 http://www.schloesser-magazin.de/eng/objekte/hd/hdthe.php バーデン・ビュルテンベルク州の城のページ。
 http://www.heidelberg-schloss.de/index.html オーディオガイドの予約申し込みサイト。日本語ページあり。
 http://www.deutsches-apotheken-museum.de/indexe.htm ドイツ薬事博物館。

○デヒオ
 http://www.lib.duke.edu/lilly/artlibry/dah/dehiog.htm

○ハイデルベルク大学
 http://www.uni-heidelberg.de






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