「モダン・タイムス」
モダン・タイムス
    1936・米
モダン・タイムス

脚本:監督:
    チャールズ・チャップリン
撮影:ロリー・トザロー
    アイラ・モーガン
作曲:チャールズ・チャップリン
編曲:アルフレッド・ニューマン

出演:チャールズ・チャップリン
    ポーレット・ゴダード
    ヘンリー・バーグマン
    チェスター・コンクリン
    アラン・ガルシア


ベルトコンベアーのチャップリン

トイレを監視する社長

自動食事機のチャップリン

機械の中に巻き込まれたチャップリン

機械に入り込んだ上司を救おうと・・・

拘置所で活躍したチャップリン

拘置所を出ると少女が待っていた

貧しくとも二人には愛と自由の世界がある

希望に向かってさあ行こう

モダン・タイムス
物語

しがない職工のチャーリー(チャールズ・チャップリン)は毎朝、ラッシュアワーの人波にもまれて工場の門をくぐった。
始業を告げるサイレン。社長が工場に掲げられたテレビの大画面から指令を飛ばす。
ベルトコンベアーが動き出す。スパナを手にしたチャーリーは部品を次々と締めていく。
両手に持ったスパナの単純な動作が癖になっている。
 
社長はモニターに映し出された工場の様子を見て指示を飛ばす。
「ベルトの速度を上げろ」
ベルトコンベアーの速度が速くなりチャーリーは必死でスパナを締める。
少し油断すると上司が文句を言う。チャーリーは文句を言う暇もなく働き続ける。
 
職工は単なる工場の歯車のひとつになっているのだ。
チャーリーがトイレで一服しているとトイレにまで社長の目が光っている。
「職場に戻れ!」
 
ランチタイムに売り込みにきた自動食事機のセールスマン。
仕事の手を休めずに食事ができる機械だ。チャーリーが実験台になる。
ベルトコンベアーの前に自動食事機が設置され機械の動きに合わせてチャーリーが食事をするのだが、機械は勝手に動き食事など出来たものではない。
チャーリーの前にスープの皿がスープを飲ませる。回転テーブルが回り、次にはパンの皿。次はトウモロコシがチャーリーの口の前でまわり始める。
その合間に固形ナプキンが口をぬぐう。トウモロコシが突然、凄い速度で回転し始めた。目を白黒させるチャーリー。
「駄目だ、こりゃ、使い物にならん!!」 社長はセールスマンに告げたが被害者はチャーリーである。
 
午後の作業開始。ベルトのスピードが一段と上げられて必死にスパナを締めなければ追いつかない。
チャーリーはとうとう気がおかしくなる。ベルトコンベアーに運ばれて機械装置の内部に入ってしまったチャーリー。巨大な歯車と歯車の間を縫うように運ばれていく。その中にいてもチャーリーの癖になった手はスパナは締め続ける。
ようやく機械の中から吐き出されたチャーリーは狂ったように見るもの見るものをスパナで締めるので工場は大混乱。
 
チャーリーは救急車で精神病院に運ばれた。人間性を無視したオートメーションの束縛から解放されればチャーリーはすぐ元に戻る。
「神経の苛立つようなことは避けなさい」と医者に言われたチャーリーは、又都会の喧騒の中に戻ったが、さて何をしたらよいのだろうか。
 
トラックから落ちた赤旗を拾い振りながら歩いていたら、いつの間にかチャーリーの後ろをデモ隊が付いて来ている。
たちまちパトカーが現れチャーリーはデモ隊のリーダーとして逮捕されてしまった。
 
拘置所である日、麻薬常習犯が食塩瓶に隠した麻薬を知らずに口にしたチャーリーは突然、勇気百倍の男に変身。
折りしも囚人が脱走しようと暴動が起きた。チャーリーは彼らを鎮圧し、看守たちから感謝された。
おかげで特別な独房に移されたチャーリーは柔らかなソファーの上で本を読む。食事には事欠かないのだ。チャーリーにとって幸せな日々であった。
 
だが皮肉なことにチャーリーがデモ隊のリーダーでなかったことが判明し無罪放免となった。
「もう少し置いてくれ」 チャーリーは懇願したが無駄である。
 
チャーリーにとり外の世界は相変わらず生活のあてのない世界である。彼は再び拘置所に戻る決心をする。
レストランでご馳走をたらふく食べたチャーリーは無銭飲食で逮捕された。警察へ向かう護送車でパンを盗んで捕まった少女(ポーレット・ゴダード)も一緒だった。
護送車が急カーブで横転しチャーリーと少女が路上に投げ出された。この時、チャーリーは決心する。少女の幸福のため何とか仕事を探し働くのだと。
 
デパートの夜警が足を折ったとの情報を知り、チャーリーは申し出てデパートの夜警に採用される。
夜、人気の無いデパートに少女を招き入れる。玩具売り場のローラー・スケートを乗り回すチャーリー。
家具売り場のベッドに少女を寝かせてやる。
その夜、デパートに数人の泥棒が入った。すったもんだもめた後、泥棒の一人が昔工場にいた頃の仲間だったことが分かった。
彼も失業して食えなかったのだ。チャーリーは彼らに食品売り場の酒を振舞った。
翌朝、店が開いているのを知らずに衣料品の中に寝ていたチャーリーはたちまち首になるのだった。
 
少女が川に沿った空き家を見つけてきた。ボロ家だが二人だけの生活は楽しかった。
チャーリーは機械修理工の助手となったがオートメーションに奉仕する仕事などガラではなかった。そこへもってきてストライキが否応無しに彼を職場から追放するのだった。
 
少女は運よくキャバレーの踊り子になることが出来た。彼女の口利きでチャーリーも雇われた。給仕としてせっせと働いたチャーリーは余興で歌を歌うことになる。
少女が歌詞を書いてくれたカフスを飛ばしてしまったチャーリーがとっさの機転で唄った「ティティナ」は拍手喝采だった。
 
だが、思わずほっとする二人に運命は冷酷だった。感化院の役人が少女の脱走罪の逮捕状をもって現れたのだ。
少女は隙を見て逃げた。チャーリーももちろん一緒だ。
翌朝、人気の無い郊外の道を二人が歩いていく。山高帽にダブダブのズボン。ステッキにドタ靴のチャーリー。心優しい少女がピッタリ寄り添う。
都会よさらば。オートメーションよさらば。貧しくとも二人には愛と自由の世界があるのだ。
                           
                    チャップリンの「ティティナ」
映画館主から

喜劇王チャップリンの代表作の一本。

来るべきオートメーションの時代を見越して“人間性喪失”の危険性に警鐘を鳴らした作品です。例によって監督・脚本・音楽・主演の独り舞台。

大量生産時代突入していく世相。機械に振り回されてはならない。人間は歯車になってはならない。人間性を失うな。それがこの映画に込められたチャップリンのメッセージなのです。

映画の中でテレビの大画面から指令を下す社長。トイレの中にまでテレビがあり全体が監視されている工場。まだテレビも監視カメラもなかった時代のチャップリンの先見性にビックリです。

傑作なのは“自動食事機”の実験台になるチャップリン。まさに機械に振り廻されるチャップリン。現代の高齢化社会にあっても役に立ちそうにない機械なのでした。そこに使う側の人間性が欠けているからです。

既に映画界はトーキーの時代になっていましたが、チャップリンはあくまでもサイレントにこだわり続けていました。この映画で初めてチャップリンの肉声が世に公表されたのです。チャップリンがラスト近くで唄う“ティティナ”がそれで、どこの国の言葉か分からないデタラメ語なのでした。しかしそれが大受け、楽譜も読めないチャップリンの音楽の才能は数々の名曲によって証明されています。

又、チャップリンの運動神経もそうとう発達していました。
デパートの玩具売り場でのローラースケートの場面。かなり際どい床の上をスイスイ滑るチャップリン。階下に落ちそうになるのに落ちない。観客はハラハラするのです。それが彼一流のギャグなのでした。

アル中の父親、発狂した母親と恵まれない極貧の少年時代を過ごしたチャップリンはこの映画に限らず貧しいもの、弱いものに対して常に優しい目を注ぎます。
パンを盗んで追われる少女に、街の貧しい子供達に愛情を注ぐチャップリン。
チャップリンの偉大なところは世界一の喜劇王として大金持ちになっても決してプロレタリアートの心を失わなかったことです。

街の灯」(1931年)から5年を経て「モダン・タイムス」。また4年を経て「チャップリンの独裁者」(1940年)とチャップリンの全盛期が続き、「ライムライト」(1952年)へと至ります。

参考文献:リバイバル公開時パンフレット

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