「サムソンとデリラ」
サムソンとデリラ
        1950・米
サムソンとデリラ

製作・監督:セシル・B・デミル
原作:ハロルド・ラム
脚色:ジェシー・L・ラスキー・ジュニア
    フレドリック・M・フランク
撮影:ジョージ・バーンズ
音楽:ビクター・ヤング

出演:ヴィクター・マチュア
    ヘディ・ラマー
    ジョージ・サンダース
    アンジェラ・ランズベリー
    ヘンリー・ウィルコクスン
    オリーブ・デアリング
    フエイ・ホールデン
    ラス・タンブリン


ヘディ・ラマー(左)とヴィクター・マチュア

アンジェラ・ランズベリー(左)

ラス・タンブリン(左)

ジョージ・サンダース

サムソンはデリラに髪を切られる

サムソンは捕らえられる

盲目となったサムソンは地下牢で・・・

サムソンが聖柱を倒す

神殿の崩壊

サムソンとデリラ
物語

ダン族が住むゾラ村に紀元前1000年頃、英雄と呼ばれる羊飼いの男サムソン(ヴィクター・マチュア)がいた。
彼の心には偉大さと弱さ、強さと愚かさが混在し、国の自由を求める強い気持ちがあった。
当時ペリシテ族はダン族を虐げ続けていた。

サムソンはペリシテ族の娘、セマダル(アンジェラ・ランズベリー)に恋をし、結婚を望んでいた。だが両親は反対し、同じダン族の気立ての良い娘ミリアム(オリーブ・デアリング)との結婚を望んでいた。
セマダルは槍の使い手だ。中庭でセマダルが槍の稽古をしているとサムソンが塀を乗り越えて入ってきた。
セマダルはこれから王(ジョージ・サンダース)と獅子狩りに出るという。セマダルが出て行くといつの間にか塀の上に女が座っていた。セマダルの妹デリラ(ヘディ・ラマー)である。
「王の前で獅子を殺してよ」 デリラがサムソンに言う。「私は貴方みたいな強い男が好きなの」 「ヤマネコめ」 サムソンは相手にしないが、デリラの馬車があると聞き、二人は馬車で出発した。

獅子(ライオン)の住む岩場に馬車が着くやいなや、大岩の上に獅子が待っていた。デリラを安全な場所に離れさせるとサムソンが獅子に向かった。飛び掛ってくるライオンとサムソンの息詰まる対決。格闘の末、サムソンはライオンを羽交い絞めにして殺した。
その時、王の一行が馬車で到着した。セマダルも一緒だ。
「サムソンが素手で獅子を殺しました!世界最強の男ですわ!」 デリラが王に向かって叫ぶ。「まさか?」 王は信じない。王はライオンの体に武器による傷がないか兵に調べさせる。傷はない。
更に王は兵士の中でも屈強な男をサムソンと戦わせた。サムソンは兵士を持ち上げ地面に叩き付けた。
「褒美を与えよう」 王が感心して言い、指輪を差し出すと、「褒美は自分で選びたい」 サムソンが言い、セマダルに近づいていく。「この娘を妻に」 デリラの顔色が変わった。「私の婚約者です!」 長官のアルトア(ヘンリー・ウィルコクスン)も顔色が変わる。
「王に二言は無い」 王は抗議を退けた。

「娘セマダルをサムソンの妻とする」 セマダルの父の一声で結婚式の宴が始まる。
その前にサムソンがペリシテ族の貴族たちに謎かけをしていたのだが、その答えをサムソンから聞きだしたセマダルがアルトアに漏らしてしまったためサムソンは怒っていた。「野良猫にも劣る女だ」 しかし賭けに負けた以上、約束の貴族30人分の服を提出しなければならない。サムソンは屋敷を出て行った。
父親は困った。式が台無しだ。そこへデリラが口添えした。「アルトア長官がいるわ」 もともとセマダルはアルトアと婚約していたのだ。セマダルとアルトアの結婚式が終わった頃、サムソンが両手に服を抱えて帰って来た。これらの服はペリシテ族のものを強奪してきたのだ。服を貴族たちに投げつけると「セマダルは?」 とサムソンは言った。父親は益々困って言う。「妹のほうをやる。いい妻になるぞ。セマダルより美人じゃ」 サムソンは暴れだした。アルトアを持ち上げて皆に向かって投げつけた。テーブルを投げ、石の建具を投げる。この騒動でセマダルと父親は槍で死んだ。家は焼け瓦礫と化した。
アルトアはサムソンが去った後、呟く。「奴には何かが宿ってる・・・」 
そして、デリラは父と姉を失い叫ぶ。「一生かかっても復讐してみせるわ!」

サムソンは村から姿を消した。アルトアはサムソンの行方を聞き出そうとダン族の者達を拷問に掛けていくが誰も口を割らない。
アルトアは更にダン族から山羊や羊、売り物まで没収していく。
そのうちにサムソンを差し出そうという者がでてきた。
「彼は村を守るわ」「それどころか苦しませておる」「彼を縛りペリシテ族に差し出そう」「サムソンは村人には逆らわない」

やがて、縄で縛られたサムソンはアルトアの兵に引かれて岩場の荒野を行く。
「主よ聞こえますか?我に力を与えたまえ、我が腕に力を宿し、村を襲った暴徒に制裁を!主の力を示したまえ!」 サムソンが祈ったとき、突如雷鳴と共に激しい風が吹き荒れた。サムソンは縄を引きちぎる。道化の小男の持っていたロバの顎骨を奪うとそれを武器に手当たりしだいに兵士を打ち負かしていく。・・・
「生身の人間とは思えません・・・どんな武器も通用しないのです・・・死傷者は1000人余りかと・・・」 王のもとに駆け込んできた兵士が息も絶え絶えに報告した。
王はアルトアを罵倒した。「我が軍はヒッタイト族やアモリ族を蹴散らした。重戦車600、軽戦車1000、駱駝突撃隊500、騎兵隊2000、槍隊3000・・・この我が軍がダンの羊飼い一人に敗れたのだ!」
アルトア 「超人的な何かが奴に力を与えているのです。勝ち目はありません」
その時、「女には屈するかも」 声はデリラだった。「彼にも弱点があるはず、男は女に秘密を話したがるものです」 王は驚きの目でデリラを見た。「私が行きます」 デリラが言った。
「褒美は?」 と王。「ご寵愛を」とデリラ。「宝石はいらんのか?」貴族の一人が言った。「銀貨1100枚をお一人づつから頂くわ」 「そんな!」 と貴族たち。
「厳しい条件を出したな」 と王。「彼を骨抜きにして渡します。彼に刃物を当てず、流血させぬとお約束を・・・。彼が苦痛にもがき死を請うようになるまで臼をひかせるのです」

ソレクの谷。そこにサムソンとソウルが潜んでいる。デリラはアルトアの兵に守られてそこまでやって来て野営のテントを張り、アルトアの兵を一旦引き下がらせた。デリラと賄いの老婆だけが残った。
夜になり、サムソンがテントに忍び込んできた。盗賊としてである。
サムソンが衣服や宝石を袋につめているとデリラが現れた。
サムソンはデリラに言い寄った。「愛してるんだ」 「それなら貴方の強さの秘密を教えて」 デリラが言う。だがサムソンは簡単には秘密を言わなかった。
そのまま二人だけの何日か幸せな日々を過ごしているうちにサムソンのデリラへの愛は更に深まった。そしてとうとう彼の力の源は彼の髪にあるのだとデリラに告げてしまうのだった。デリラはそれを聞き妖しく目が輝いた。

ミリアムとソウルがデリラのテントにやって来た。
「貴方が女に溺れている間に村は壊滅状態よ」 ミリアムはサムソンに村の窮状を訴える。サムソンは村に帰ると決意した。
ミリアムとソウルが先に帰った後、サムソンはデリラの仕掛けた毒酒を飲み、デリラに頭髪を切られてしまった。デリラの知らせで駆けつけたアルトアによりサムソンは捕らえられた。もはや頭髪を切られたサムソンに力は宿っていなかった。
「力は奪い取ったわ、貴方はただの男よ。ダンの小娘には渡さないわ」 デリラは勝ち誇ったように言った。「ドブネズミめ!」 サムソンは自らの不覚を悟るのだった。「お前の悪名は永遠に残るだろう」

アルトアは焼けた金具でサムソンの両目を焼き潰した。盲目となったサムソンが地下牢で臼を引く。
デリラは貴族諸侯から銀貨1100枚づつを獲得し王からも寵愛を受ける身分になった。しかし、地下牢でサムソンを見た時、驚愕する。
「眼を潰されている!もう、私を見れない!」 デリラは王に食って掛かる。「約束した筈ですわ!」 「刃物は当てず、流血もさせてはおらん」 王は平然と言った。

来る日も来る日も臼を引き続けるサムソンを思いデリラは悩む。
サムソンは臼を引きながら神に訴えていた。「主よ、私をお忘れになってしまわれたのですか?私は力と共に希望を失い、視力まで奪われました。どうか再び我に力を与えたまえ」
そこへデリラがやって来る。
「貴方を慰めにきたのよ」 「お前は銀貨のために我が愛を打ち砕いた」 「命を掛けてでも償いたいの」 「お前が来るのを待っていたのだ」 サムソンがデリラを持ち上げた、その時、「サムソン!鎖が!」 デリラが叫んだ。サムソンの鎖が外れている。「神のご慈悲だ」 「これで貴方は自由よ。私の銀貨でラクダの調達や衛兵の買収をするわ。エジプトに行くのよ」 「主は逃げるために力を授けたのではない!」 「その眼じゃ戦えないわ、逃げないとタゴン神殿に連れて行かれるわ」 「今日は式典か?」 「聖柱に貴方を縛りつけ拷問するつもりよ」 「2本の柱のことか?!・・・私はここに残る。私は主の力を得た。君は神殿に入るな」

神殿の前の広場で人々が踊り、宴がたけなわだ。巨大なタゴン像が見下ろしている。そこへ鎖に繋がれたサムソンが引っ張り出された。ソウルがサムソンのもとへ駆けつける。
「ミリアムを連れて神殿を離れろ」 サムソンが言う。ミリアムは王の席へ、「すべてを失ったサムソンは国に害を及ぼしません、どうか私に引き取らせてください」 隣のデリラにも、「彼を愛していたのなら釈放を認めて欲しい」 と訴える。
デリラは、「お前は彼を独占したいだけだわ。貴方に渡すくらいなら彼を殺すわ」 と斥ける。
サムソンは広場の中央で鎖を引き倒される。その上に網を被せる。鞭を持った兵士が立ちはだかる。周りの嘲笑を浴びる。

デリラは見かねて、「彼のところに行くわ」と言うと、「行けば私のところには戻れぬぞ」 と王が言った。それを無視してデリラは兵士の鞭を取り上げサムソンの前に立つ。デリラがサムソンを鞭打つとサムソンが鞭を掴む。
「神殿のところへ連れて行け」 「分かったわ」 デリラがサムソンを導き階段を昇っていく。サムソンを2本の聖柱の間に立たせる。
「中庭へ逃げるんだ」 サムソンが言った。「いやよ」 「神の天罰が下り、神殿に死が訪れる」 「恐れないわ」 「どこにいようとも私の愛は君の側だ、行け!」
サムソンは天を仰いだ。「今度だけで結構です、我に力を与えたまえ」 サムソンは聖柱を押し広げた。
王が見上げる。人々が見上げる。「あいつは何をしてるのだ」 まだ嘲笑は止んではいない。だが、見よ!サムソンの力を!聖柱がずれていく。そして、柱は崩れた。
聖柱が大音響と共に崩れ、タゴン像が人々の頭上に落ちてきた。塀が崩れ、神殿全体が崩壊していく。すべての人々を下敷にして・・・。

「あんなに強かったサムソンが何故死んだの?」 ソウルが言うと、「・・・彼の力は不滅よ、1000年以上語り伝えられるわ」 ミリアムが寂しげに答えるのだった。
映画館主から

スペクタクル史劇の巨匠と異名をとったセシル・B・デミル監督の晩年の一大スペクタクル。
旧約聖書に登場するダン族の怪力無双の若者サムソンとペリシテ人の娘デリラの愛憎劇です。

主演のサムソンには「荒野の決闘」(’46年、監督:ジョン・フォード)のヴィクター・マチュア。対するデリラには悪女ぶりが板に付いたヘディ・ラマー。
それにジョージ・サンダース、アンジェラ・ランズベリーなどが脇を固めています。後年「ウエスト・サイド物語」(’61年、監督:ロバート・ワイズ)でシャープなダンスを見せるラス・タンブリンが子役で出演しています。

ラストで神から力を授かったサムソンが神殿の柱を倒して神殿全体が崩壊するシーンはまさにセシル・B・デミルの本領発揮で今見ても相当の迫力です。
セシル・B・デミルは本作の6年後に彼自身の作品のリメイクである「十戒」(’56年、主演:チャールトン・ヘストン)を完成させるのです。

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