幽霊西へ行く
  1935・英
幽霊西へ行く

製作:アレクサンダー・コルダ
監督:ルネ・クレール
原作:エリック・コウン
脚本:ロバート・シャーウッド
撮影:ハロルド・ロッソン
音楽:ミューア・マシーン

出演:ロバート・ドーナット
    ジーン・パーカー
    ユージン・ポーレット
    エルザ・ランチェスター
    ラルフ・バンカー
    パトリシア・ヒリヤード

ロバート・ドーナット

幽霊西へ行く
物語

これは18世紀のスコットランドの話だ。スコットランドがイングランドと戦っていた時だ。
スコットランドにグロウリー家という豪族の城があった。
敵対するマクラガン家の親子6人が出陣間際にやってきて、さんざんグロウリー家を侮辱して帰った。
彼らは 「グロウリーの者たちは皆臆病で満足に戦争で戦えまい」 という捨て台詞を残して立ち去ったのだ。
 
グロウリー家の当主は息子のマードック(ロバート・ドーナット)を戦場に送り出し、その侮辱を晴らしてくれるものと信じ、好物のウィスキーを飲みあっけなく死んだ。
一方マードックは戦場に赴いたはいいが、女と遊ぶのが好きで羊飼いの女と戯れている。
そのうちにマクラガン家の連中に追われ逃げ惑ううちに、味方の撃った大砲の弾が命中し木っ端微塵となった。
ユラユラと落ちてきたのはスコットランドの彼の帽子だけだった。
 
「お父さん、お父さん、私はとうとう死にました。戦死しました。どうぞ、皆様の祖先の中に入れてください!」 天国に向かってマードックが叫ぶ。
「ノー!」 雲の中から父親の声がする。「お前はなんて無様な死に方をしたんだ。女の尻を追いかけているうちに撃たれて死ぬなんて。お前は幽霊になって城に戻るのだ。マクラガンの家に復讐するまで許さん!」

ここで話は200年後の現代に移る。
グロウリー城の当主ドナルド(ロバート・ドーナット二役)は度重なる借金で一文無しの状態だった。それで彼は城を売ることにした。
看板を見て車を止めたのはペギー(ジーン・パーカー)だった。彼女はアメリカの食料品王マーティン(ユージン・ポーレット)の娘だ。城の中をドナルドに案内してもらい益々この城が気に入った。

ドナルドに夕食に招かれ、ペギーは両親を伴ってやってきた。
マーティンもすっかり城が気に入った。だがドナルドは気がかりなことがある。深夜零時になると毎夜マードックの幽霊がでるのだ。
そして「マクラガンはいないか?」と探し回るのだ。
そんな幽霊付きの城を買う物好きがいるだろうか?

しかし、マーティンは城を買うことに決めた。そして城を解体して海を渡りアメリカのフロリダに再建するという。ドナルドは反対したがマーティンの意思は固かった。
解体された城は船で大西洋を渡る。ドナルドも同行し再建工事の総監督として任務に当たることになった。深夜、マードックの幽霊は戸惑った。ここはどこだ?自分は何故船に乗っている?そこへペギーが来て二人は会う。ドナルドがスコットランドの帽子を被りスカートをはいている?女好きのマードックはペギーに声をかける。「なぞなぞ遊びしよう」 ドナルドと間違えてペギーは興ずる。

ドナルドはマーティンにマードックの幽霊を引き合わせた。噂は聞いていたが目の前にドナルドそっくりな幽霊が本当にいるので仰天するマーティン。こんな城買うのは辞めようか。しかし、まてよと考える。幽霊のいる城は宣伝に使える。

マーティンの宣伝効果でアメリカ中が上へ下への大騒ぎ。
フロリダに城が再建されると全米の好奇の的となった。カメラマンや新聞記者が駆けつける。
だがマーティンの商売敵であるビグロウは「幽霊なんてマーティンの出任せの宣伝に過ぎん」と笑い飛ばすのだった。

城の落成記念の祝賀会が盛大に行われようとしていた。だが肝心の幽霊が一向に出現してくれない。困ったマーティンはドナルドに幽霊の身代わりを頼む。しかし、式の間際になってドナルドはばかばかしくなりその役を演ずるのを放棄した。

だが、祝賀会の出席者の中にマクラガンの子孫がいるのを知ったドナルドが叫んだ。
「マードック!出て来い!マクラガン家のものが来ているぞ!」
突然、窓に疾風が吹き込みカーテンが羽ばたいた。そこにマードックの幽霊が立っていた。「マクラガンの子孫はどこにいる!!」
マクラガンの子孫は驚愕し逃げ回る。マードックはマクラガンの子孫にグロウリー家を愚弄した罪を認めさせ土下座させて詫びを入れさせた。

かくして無事復讐を果たしたマードックの幽霊は何世紀にも渉る幽霊生活から解放され天国の父から昇天を許されたのだった。
そして、いつしか恋に落ちていたドナルドとペギーは目出度く結ばれましたとさ・・・。
映画館主から

フランス出身のルネ・クレール監督のコメディ映画の傑作。
古城に毎夜現れる幽霊といえば「ハムレット」を思い出しますが、これは復讐劇という点では似ていますが、風刺の効いたコメディなのです。
 
私はこの映画を確か中学生の頃、テレビ放映で見て凄く面白く、お洒落な作品だと記憶していたのです。
監督のルネ・クレールもその時はまだ知らず、後年神保町の「岩波ホール」で「そして誰もいなくなった」(’1945・米)を見た時に初めて知ったのでした。
彼は古典フランス映画のビッグ5の一人だそうで、ちなみに他の4人は、ジャック・フェーデ、ジャン・ルノワール、ジュリアン・デュヴィヴィエ、マルセル・カルネの颯爽たる顔ぶれです。
 
物語はロバート・ドーナット演ずるスコットランドの女たらしの息子が不甲斐なく戦死し、天国に行くのを許されず幽霊となって城にとどまり、何世紀も後の現代、ようやく復讐を果たして昇天を許されるというお話です。
全体がユーモアと風刺が漲り、幽霊映画なのに恐ろしい映画ではありません。
ラストで宿敵が現れたとき、幽霊が出現するシーンは今見ても驚嘆するほど真に迫っています。
 
日本映画の元祖でもある伊丹万作がルネ・クレールについて感想を述べています。
「技巧と機知を縦横に駆使する知的遊戯、私はこれをルネ・クレールの本質と考える。「幽霊西へ行く」は、彼が彼の本領に即して融通無碍に仕事をしているし、形式と内容がぴったりと合致して寸分のすきも無い。完璧なる作品という語に近い」と、大絶賛なのです。
 
主演のロバート・ドーナットはヒッチコックの英国時代の代表作の1本「三十九夜」にも出演しているハンサム男優です。

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