「一心太助」
中村錦之助映画
新諸国物語・笛吹童子 新諸国物語・
笛吹童子
(’54東映)

監督:萩原 遼

共演:東千代之介
    大友柳太朗
    月形龍之介
    高千穂ひづる
    田代百合子
子供向けラジオ・ドラマとしてNHKで連続放送され、大好評を博した北村寿夫の原作を創立間もない東映が映画化。
♪シャラーリシャラレーロ、シャラーリシャラレーロ♪の福田蘭童の音楽が子供達の血を沸かせた。
3部作になっており予想外の大ヒットは東映黄金時代への推進力となった。

応仁の乱の後、丹波国満月城城主の二人の息子は明国に留学し、兄の萩丸は武芸を、弟の菊丸は面作りを学ぶ。又、弟は笛吹童子と呼ばれ笛の名人であった・・・・。
新諸国物語・紅孔雀 新諸国物語・
紅孔雀
(’54東映)

監督:萩原 遼

共演:東千代之介
    大友柳太朗
    高千穂ひづる
    星美智子
「笛吹童子」の大ヒットを受けて映画化された5部作。これまた大ヒットし、東映を五社の盟主の地位に押し上げるのに貢献した。
シリーズが完結すると「紅孔雀・大会」が映画館にやってきて又々子供心の血が騒いだ。

南紀州の浜に住む代官那智の嘉門は、ローマの聖者から授けられた紅孔雀の宝庫の鍵を持っていた。
元海賊の網の長者は、されこうべ党の妖術師・一角とともに密かにそれを狙っていた・・・・。
里見八犬伝 里見八犬伝(’54東映)

監督:河野寿一

共演:東千代之介
    島田照夫
    藤里まゆみ
    月形哲之介
    田代百合子
    千原しのぶ
    原 健索
滝沢馬琴の大衆小説を5部に分けて映画化。

犬の八房の首から放たれた『仁義礼智忠信孝邸悌』の数珠を持つ八犬士の活躍を描いた。
スケールの大きな撮影で、特に東千代之介と中村錦之助の天守閣上の死闘は見ものだった。
遺された里見家の再興への八犬士たちの奇妙な出会いは映画的満足を充分に与えてくれた。

’59年には第二東映の若手スター(伏見扇太郎、里見浩太郎など)の出演で3部作で再映画化されている。
織田信長 織田信長(’55東映)

監督:河野寿一

共演:高千穂ひづる
    月形龍之介
    柳永二郎
    進藤英太郎

山岡荘八の人気小説の映画化。

若き織田信長は隣国・美濃の城主・斉藤道三の娘・濃姫を妻とするが、道三の尾張を狙うたくらみに油断ならなかった・・・。

荒々しい若武者の錦之助が育ての親の月形龍之介の死に、気のふれた風を装い仏前の灰を投げた後、密かに川の中で「じい、何故死んだ!」と泣き叫ぶ姿が印象的であった。
一心太助 一心太助(’58東映)

監督:沢島 忠

共演:月形龍之介
    中原ひとみ
    堺 駿二
    山形 勲
    里見浩太朗
    赤木春恵

    
中村錦之助が江戸っ子の魚屋・一心太助と三代将軍・徳川家光を二役で演ずるこのシリーズは5作作られ、中村錦之助の地でいくような生き生きとしたキップのよさではまり役だった。

ある日、太助は将軍家光の参詣を邪魔してしまった母子を身をもって助けたことから、天下のご意見番こと大久保彦左衛門と主従の関係を結ぶ。
その頃、旗本と大名の間に争いが絶えず太助も騒動に巻き込まれていく・・・。
遠州森の石松 遠州森の石松(’58東映)

監督:マキノ雅弘

共演:東千代之介
    丘さとみ
    中原ひとみ
    長谷川裕見子
村上元三のベストセラー「次郎長三国志」の中の森の石松の金比羅参りのエピソードをマキノ雅弘の職人芸豊に描いた快作。
錦之助がアイドル・スターから演技派への脱皮を果たした作品でもある。

森の石松は次郎長の命を受けて金比羅参りに旅立つが、途中で夕顔という女郎に一目ぼれ。
夫婦になることを誓うが、卑怯な都島一家の闇討ちにあう・・・・。
独眼流正宗 独眼流正宗(’59東映)

監督:河野寿一

共演:佐久間良子
    岡田英次
    大川恵子
“独眼流”と異名をとった武将・伊達政宗が片目失明という肉体的コンプレックスを乗り越えて武士として成長してゆく様を描いた正宗の青春記。

この年、錦之助は「忠臣蔵」の浅野内匠頭役などで演技派への脱皮を図っており、本編でも片目を失った正宗の苦悩をうまく表現した。
浪花の恋の物語 浪花の恋の物語(’59東映)

監督:内田吐夢

共演:有馬稲子
    片岡千恵蔵
    田中絹代
    花園ひろみ
    進藤英太郎

近松門左衛門の名作「冥途の飛脚」を名匠・内田吐夢が、作者の近松を狂言回しに登場させ、独特の様式美の世界を創出した。

徳川時代の飛脚問屋の養子・忠兵衛は遊女・梅川を愛するあまり梅川が他の客に身請けされるのを嫌い、それを阻止しようとする。
あげく、他人の金を勝手に使い梅川を引き取る。
やがて二人は罪人の身となり人目を忍んで生まれ故郷への逃避行を敢行するが・・・。
親鸞 親鸞(’60東映)

監督:田坂具隆

共演:中村賀津雄
    千秋 実
    大河内伝次郎
    千田是也
    木暮実千代
    岡田英次
    月形龍之介
吉川英治の原作を、日活から東映に移籍した田坂具隆が監督した入社第一回作品。

青蓮院の得度から比叡山、奈良、京都の修行時代と話は続くが、青年僧としての彼には仏教と人生について疑問があり求道と人間的欲望の処理などの問題が付きまとう。
宮本武蔵 宮本武蔵(’61東映)

監督:内田吐夢

共演:入江若葉
    木村 功
    三國連太郎
    丘さとみ
    高倉 健
    片岡千恵蔵
    浪花千栄子
    千田是也
吉川英治の原作を内田吐夢監督が映画化した宮本武蔵映画の決定版。
5部作を5年かけて発表した。
錦之助も彼の持てるキャリアを全てぶつけ熱演し代表作となった。

関が原の戦いに雑兵として出陣した作州の若い郷士・武蔵は又八とともに敗走の途中、野盗の後家・お甲と娘・朱実に助けられる。又八はお甲との愛欲に溺れ、武蔵は故郷で禅僧・沢庵に救われ、学問を学び、精神を修練していく。
関の彌太ッペ 関の彌太ッペ(’63東映)

監督:山下耕作

共演:十朱幸代
    木村 功
    岩崎加根子
    安部 徹
長谷川伸の股旅物の原作の映画化。

ふとしたきっかけから、孤児・お小夜をその実家に届け名も告げずに去っていった旅人・関の弥太っぺは、10年後、お小夜一家が彼を命の恩人として探しているのを知るが、ヤクザ渡世の身をはばかって立ち寄ろうともしない。
しかし、同じヤクザ仲間の箱田の森介が昔の恩人と偽ってお小夜の実家に乗り込み、お小夜を苦しめていると知るや弥田っぺは素性を隠してお小夜の前に現れる・・・。
武士道残酷物語 武士道残酷物語(’63東映)

監督:今井 正

共演:東野英治郎
    渡辺美佐子
    荒木道子
    森 雅之
    有馬稲子
    加藤 嘉
    木村 功
    三田佳子
    岸田今日子
    江原真二郎
南条範夫の原作を社会派の今井正が監督した7話によるオムニバス作品。
錦之助が時代ごとの主役を演じ分け、ベルリン映画祭でグランプリを獲得した。

飯倉家の祖先の時代から、主君や国家のために犠牲となっていく残酷な歴史を綴っていく。
藩主の落ち度を被っての切腹、殉死。
不義密通の濡れ衣で男根を切られたり、老中に娘を献上したり、戦争で死んだりと様々な理不尽な武士の世界を描いた。
仇討 仇討(’64東映)

監督:今井 正

共演:田村高廣
    丹波哲郎
    三田佳子
    佐々木愛
    小沢昭一
    進藤英太郎
播州の小藩、無役の武士・新八は武器庫点検の諍いから上司を果し合いで斬殺する。
彼は仇として上司の弟たちから次々と狙われる。
ラストのダイナミックで凄惨な大立ち回りは錦之助の力演で迫力充分だった。

武士道の重圧から逃れようとしてあがきながら、遂に果たせず死んでゆく新八の姿を、彼の精神的葛藤を中心に描いた時代劇の力作。
祇園祭 祇園祭(’68松竹)

監督:伊藤大輔
    山内鉄也

共演:岩下志麻
    三船敏郎
    佐藤オリエ
    渥美 清
    小沢栄太郎
    伊藤雄之助
    高倉 健
    美空ひばり
応仁の乱の戦火の中から染色人の錦之助ら町衆の力で祇園祭を復活させる話。

中村錦之助プロに三船敏郎や岩下志麻も協力的に出演し、オールスター映画の様相だったが、出来栄えはもう一つで不発に終わった作品であった。
風林火山 風林火山(’69東宝)

監督:稲垣 浩

共演:三船敏郎
    石原裕次郎
    佐久間良子
    大空真弓
    中村賀津雄
    緒方 拳
武田軍の名参謀・山本勘助の波乱の生涯を描いた井上靖の原作を時代劇の名匠・稲垣浩が映画化。三船プロの製作ということもあって大ヒットした。

一代の軍師と言われた山本勘助(三船)は敵将の娘・由布姫に恋をしてしまった。
その葛藤が悲劇の武人の側面を彩る・・・。

錦之助は武田晴信に石原裕次郎は上杉謙信、佐久間良子は由布姫を演じた。

幕末 幕末(’70東宝)

監督:伊藤大輔

共演:三船敏郎
    仲代達矢
    吉永小百合
    仲谷 昇
    小林桂樹
司馬遼太郎の「竜馬が行く」をベースに伊藤大輔が史実に忠実に作り上げた。

階級差別の厳しい土佐藩を去った坂本竜馬が江戸へ出て開国論者の勝海舟に会い、憂国の情を知る。
時は勤皇左幕の論議沸騰時代。だが、立場の相違を超えた視野こそ必要と悟った竜馬は、西郷と桂を合わせたり、慶喜の大政奉還を説いたりして各地を奔走するが、慶応三年、京都の下宿屋において同士中岡慎太郎もろとも刺客の刃に倒れる。
映画館主から

私は幼い頃から東映の時代劇を多く見て育ちました。叔母が映画好きで私を連れて良く映画館に行ってくれたのでした。

「笛吹童子」や「紅孔雀」を胸躍らせて見たものです。中村錦之助は幼い私にとってヒーローでした。
同時に東千代之介や大友柳太郎もヒーローになりました。

錦之助はその頃の他のスターたち同様、歌舞伎界から映画界に転進した人です。既に大スターになっていた美空ひばりの相手役として新芸術プロの目に止まったのがきっかけでした。「ひよどり草紙(’54年、松竹)」がそれでした。映画デビューを果すと新東宝を経て東映に入社、同年の「笛吹童子」から「紅孔雀」「里見八犬伝」と矢継ぎ早に出演しています。

以後、東千代之介や大川橋蔵と共に先輩格の市川右太衛門、片岡千恵蔵と東映の看板を担っていくことになります。
若手の中でも錦之助の演技力は群を抜いていました。特に「宮本武蔵」五部作での演技は圧倒的でした。内田吐夢のダイナミックな演出とも相まって戦後幾度か映画化された武蔵映画の中にあって最高峰になったのでした。

それからの錦之助は、単なるスターではなく、深く人間の内面の喜怒哀楽を表現できる俳優になったような気がします。
特に「武士道残酷物語」「仇討」の錦之助には鬼気迫るものがありました。

1972年には芸名を萬屋錦之介に改め、1968年には中村プロダクションを設立。本格的にテレビ時代劇にも力点を置くようになります。
「子連れ狼」「破れ傘刀舟悪人狩り」「破れ奉行」「長崎犯科帳」「破れ新九郎」などです。

しかし、時代の趨勢か中村プロダクションは1982年に倒産。自身も重症筋無力症と診断され、1996年には咽頭癌を発症、1997年、肺炎により64歳の波乱の生涯を閉じたのです。
私生活でも二度の離婚と三度の結婚、三男の事故死など不幸にも会いましたが、錦之助の映画は永遠に心に残るでありましょう。

  映画館へ戻る