【キリのコメント17】
今度こそ死んだと思ったオオナムヂが、焼けただれた平野からナリカブラを持
って現れたときには、スサノオはさぞかし驚いたでしょう。
もちろん、スセリビナは大喜びだったでしょう。
夫は死んだものと思い、葬式の道具を持っていたのですから。
次々とスサノオの難題を克服してきたオオナムヂは、最後にスサノオの髪の毛
にいるシラミをとるように命じられます。
しかし、髪の毛にいたのは、シラミなんてかわいいものではなく、ムカデ達!
髪の毛にムカデがワシワシいるくらいなので、スサノオは巨人として描かれて
いるようですね。
そうでなければ、ムカデがたくさんいれないでしょうから。
さて、素手でムカデを触るわけに行かないオオナムヂは困ってしまいましたが、
ここでも、妻のスセリビメのアイデアでこの難題を解決できました。
それは、ムクの実を噛んで、その後、ハニ(赤土)を口にふくみ、一緒に出す
ことです。
こうすることで、スサノオにはムカデを噛んで、吐き出しているように聞こえ
ます。
見事なスセリビメの機転ですね。
オオナムヂの献身的な態度に心を許したのか、スサノオはそのまま寝てしまい
ました。
その間に…スサノオの髪を垂木に結び付けてしまいます。
そして、部屋の入り口には500人の人でないと動かせないくらいの岩、イホビ
キノイワ(五百引の石)を置くのですが、すごい力ですね。
これだけの準備をしてから、スセリビメを背負って逃げるのですが、その際に、
スサノオ所蔵の生太刀、生弓矢、そして、天の詔琴を持ちだします。
この物語ではスセリビメがその場所を教えていますが、古事記にはそのようは
表記はありません。
さて、さぁ、逃げようとしたときに、天の詔琴が木の枝にひっかかって大地を
揺るがすほどの轟音が出てしまいます。
その音に驚いて目を覚ますスサノオ。
でも、髪の毛が縛られているので、「うぉっ!」とビックリしたことでしょう。
飛び上がった瞬間に頭を引っ張られる感じですからね。
髪の毛をほどいている間に遠くに逃げるオオナムヂ。
それを追って黄泉比良坂までやってくるスサノオ。
ん? 黄泉比良坂?
皆さん、覚えていますか?
イザナキがイザナミに追われたときに出てきた黄泉の国にあったあの坂です。
確か、この世とあの世を結ぶ坂。
ということは、根の国は実は黄泉の国だったのでしょうか?
ここで追うのをあきらめたスサノオは、オオナムヂに兄弟神への対策と、今後
の繁栄を祝福し、オオクニヌシ(大国主神)の名と、本文では紹介しませんで
したが、ウツシクニタマノカミ(宇都志国玉神)の名も与えます。
でも、最後に「この奴(やっこ)」という訳すと「こやつよ」という人を賤しめ
て呼ぶ表現をしています。
…やっぱり娘をとられてくやしかったのでしょうか!?
無事、根の国から戻ることができた、オオナムヂ改め、オオクニヌシは、スサ
ノオの武器を携え、彼のアドバイス通りに今まで散々いじわる(というより殺
されていますが…)された兄弟神をやっつけます。
古事記中には兄弟神を殺したとも書かれていませんし、最初に兄弟神が国を譲
った…ともあるので、許したのかもしれませんね。
そうそうオオクニヌシにはたくさんの名前があります。
オオナムヂ
オオクニヌシ
ウツシクニタマ
アシハラシコヲ
ヤチホコ
全部で5つ。
どうやらそれぞれ別々の神をオオクニヌシとして統合したのでは? といわれ
ています。
5人の神が一つの神として描かれている訳ですね。
話は戻って、その後のオオクニヌシ。
最初の約束通り、ヤガミヒメを妻にしますが、すでに本妻として、根の国から
つれてきたスセリビメがいます。
このスセリビメは、大変嫉妬深い女性だったらしく、次回と次々回分として本
当は書かなければいけないのですが、敢えて割愛する、妻問い物語でも他の女
性に求愛するオオクニヌシに対して嫉妬するスセリビメが描かれています。
そのスセリビメを恐れたヤガミヒメは生まれ故郷因幡の国に戻ってしまいます。
但し、生まれたばかりの赤ん坊は出雲に残して。
それも、木の股に差し挟んでです!
なぜ、こんなことをするのでしょうか?
それはさておき、このときの子供を木股神と言うそうです。
…そのまんまですね。
さて、次回からは冒険を終えたオオクニヌシの国つくりが始まります。
次回「スクナビコナと国づくり」をお楽しみに〜