【キリのコメント33】

 今回も古事記と日本書紀の違いをご紹介いたします。
 といっても、この出産のシーンで大きく違うのは、ある一書で、トヨタマビメ
 はヤヒロワニではなく、「竜」になっていることくらいです。

 また、古事記では山幸彦が地上に戻ってから妊娠のことをいいますが、日本書 
 紀のほとんどは、地上に戻る際に妊娠の事実を伝えています。

 また、トヨタマビメの正体のヤヒロワニですが、このワニが一体、本当のワニ
 なのか、それともよく言われるように、「サメ」なのか、いろいろな説があって
 はっきりしていません。

 もともとインドネシアからの説話がよく古事記に伝わっていますが、この海の
 国の物語も大本はインドネシアからの説話だとすると、当初は「ワニ」で伝わ
 ったと考えてもいいかもしれませんね。

 ただ、日本にはワニはいませんから、山陰地方などの「サメ」のことかもしれ
 ません(山陰地方ではサメのことをワニというそうです)。

 ワニなのか、サメなのかを置いとくとしても、自分の奥さんがサメだったらビ
 ックリですよね。

 私だって思わず逃げ出しちゃうと思います。
 ちなみに、日本には、このような動物女房は、「鶴の恩返し」だけでなく、「魚
 女房」「蛤女房」「蛇女房」などの民話に共通しているようです。

 ところで、ヤマサチヒコ(ホヲリノミコト)とトヨタマビメの間に生まれる子
 の名前は、アマツヒコヒコナギサタケウカヤフキアヘズノミコト(天津日高日
 子波限建鵜葺草葺不合命)と非常に長い名前です。

 この子の名前の由来は、この物語に由来します。
 ナギサタケ(波限建)…なぎさに建てた
 ウカヤフキ(鵜葺草葺)…鵜の羽でかやぶきした
 アヘズ(不合)…母に会えず?
 ということでしょうか?

 …最後の会えずがちょっと自信がありませんが(^^;

 ところで、天孫ニニギノミコトの子供が、ホヲリノミコトですが、その子がこ
 のアマツヒコヒコナギサタケウカヤフキアヘズノミコトです。

 この御子は、トヨタマビメの妹、タマヨリビメと結婚します。
 つまり、叔母と結婚するのですが、2つの疑問(?)が。

 年が離れすぎていないか?
 という点と
 タマヨリビメも正体はきっと「ワニ」だと思うのですが…
 という2点です。

 まぁ、愛に年の差はないのでしょうし、相手がたとえワニでも、父親のホヲリ
 ノミコトも後に後悔するくらいなので、大きな問題ではないのかもしれません
 ね。

 そもそもカカシやカエルも神になるのですから、海の生物ワニが天孫の血に混
 じっても全然問題もないのかもしれません。

 ただ、正直この古事記を読んで驚きの連続だった中でも、我々日本人の祖先で
 ある、天皇の血に「ワニ」の血が流れているのにはビックリしました。

 このアヘズノミコト(ちょっと略しました)の子が後の初代天皇神武天皇なの
 で、初代天皇のお母さんとおばあさんは実はワニだった…なんてシュールな物
 語だったりします。

 話は変わって、このアヘズノミコトは、ちょっとかわいそうな人物です。
 天孫の孫で、神武天皇のお父上なのに、古事記の中では全く「セリフ」がない
 のです。

 ただ、彼は叔母のタマヨリビメと結婚し、4人の子供を生んだ…と書かれてい
 るだけです。

 日本書紀でも、西洲の宮でなくなり、日向の吾平山上陵に葬ったとあるだけで
 す。

 微妙に影の薄い人物ですね。

 さて、次回から神代の時代が終わり、古事記も上巻から中巻に変わります。
 初代天皇神武天皇の物語からヤマトタケルの大活躍など、まだまだ神話の世界
 を出ませんが、手に汗握る物語が進行していきます。

 お楽しみを〜
  
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