【キリのコメント42】

 古事記の中でヤマトタケルの物語と一二を争う悲劇がこのサホビメの物語です。
 愛する兄と夫の間で揺れ動く女性の気持ちがよく現されています。

 最初は軽い気持ちでいった「兄(いろえ)ぞ愛(は)しき」という言葉が後々
 の悲劇につながってしまう訳ですが、ここの記述は日本書紀の方が詳しいです。

 日本書紀では、「容色を以って人に仕えるのは、色香が衰えたら寵愛は終わる。
 今、天下に美人は多い。それぞれが寵愛されることを求めている。どうして容
 色だけを頼みにできようか。それでもし、自分が皇位につけば、お前と一緒に
 天下に臨むことができる。枕を高くして眠れる。どうか、私のために天皇を殺
 してくれ」とかなり具体的にその理由を書いています。

 こちらの理由のほうが納得ですね。

 当然、サホビコは苦悩します。
 兄のために夫(天皇)を殺すか。
 愛する夫のために兄のことを話すか。

 どうすることもできない彼女は涙を流します。

 その涙に驚き天皇は目を覚まします。

 古事記では夢の出来事のシルシについての解説はありませんが、日本書紀では
 「錦の小蛇はサホビメの預かった小刀、雨が降ったのはサホビメの涙」とはっ
 きり書いています。

 そういう意味では、前半の詳細は日本書紀のほうが詳しいですね。

 いよいよサホビメと天皇の悲劇は始まります。

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