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 日本の原典〜古事記物語〜 第31号 2004年1月5日発行
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 <第31話 海の神の宮への訪問>

 「うううぅぅぅ」

 「もし」

 「うううぅぅぅ」

 「もし、どうされました?」

 「えっ、はい!?」

 「どうして泣いているのですか?」

 「実は…」

 そういって山幸彦は、シホツチノカミ(塩椎神)に泣いていた訳を話した。

 「そうだったのですか、なくされた釣針を探しているのですね」

 「でも、どうしたらいいのか分からないのです!」

 「私にいい考えがあります」

 「それは、どんな!」

 「さぁ、この小船に乗ってください」

 「はい」

 「そのまま潮の流れに任せて進むと、魚のうろこのような建物が建っている宮
  殿にたどり着きます」
 
 「ふむふむ」

 「それが海の神(ワタツミノカミ:綿津見神)の宮殿です」

 「そうですか」

 「そうしたら、こうしてください…」

 シホツチノカミのいわれるとおりに小船に乗り、海の神の宮殿についた山幸彦。

 「おぉ、あった、あった。この門のそばに井戸があるはずだが…」

 そういって井戸のそばの桂の木に登る山幸彦。

 「あとは、海の神の娘に相談するだけだな」

 そうこうするうちに、宮殿から玉器をもって女性が現れた。

 「あら? 井戸に人影が写ってるわ」

 上を見ると、うるわしい男性が木の上に座っていた。

 (あの素敵な人はどなただろう?)

 「娘さん」

 「はいっ」

 「水をいただけないだろうか?」

 「ど、どうぞ」

 水の入った玉器を渡す女性。

 ブチッ

 ???

 ペッ

 山幸彦は玉器に入った水を飲まずに、首にかけた珠をとり、口に含んでその玉
 器に吐きいれた。

 「ありがとう」

 「どういたしまして」

 (あれ? この珠が器にくっついて取れないわ)

 屋敷に戻った女性は、トヨタマヒメ(豊玉毘賣)に玉がついたままの玉器を渡
 した。

 「門の外に誰かいるのですか?」

 「はい、それは麗しい方で、わが海の国の王にも勝るほど貴いお方です」

 「その方がこれを?」

 「はい、水を所望されたので、この玉器を渡すと、水を飲まないで、この珠を
  器にお吐きになりました」

 「あら? 器から離れませんね」

 「そうなのです。私も珠をとろうとしたのですが、器から離れず、仕方なくそ
  のままお持ちしたのです」

 「その方にお会いしたいですね」

 「井戸のほとりの桂の木の上にいらっしゃいます」

 「わかりました」

 ……………………………

 (その方はどちらに…)

 (はっ!)

 (なんて素敵なお方…)

 山幸彦を見たトヨタマビメは、一目ぼれしてしまう。

 「お父様!」

 「どうした姫よ」

 「家の門前にそれはもう素敵な男性がいらっしゃるの!」

 「ほぅ、どれどれ、姫がそこまでいう男性を見に行こう」

 「あの方です!」

 「おぉ、彼は天孫のお子さんではないか。御子よ、どうぞ、こちらへ!」

 そういって、宮殿に招かれた山幸彦は、アシカの皮畳を八重に重ねて敷き、さ
 らにその上に絹の畳を八重に重ねて敷いた上に座らせ、たくさんのご馳走をふ
 るまわれた。

 「御子よ、よかったら私の娘と結婚してくださらぬか?」

 「それは喜んで」

 「うれしい!」
 
 こうして、山幸彦は海の国に三年間住むことになる。

 <参考文献>
 岩波書店:古事記(倉野憲司校注)
 講談社学術文庫:古事記(上)全訳注(次田真幸)

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 【キリのコメント31】

 *このページは古事記との違いや、さらに詳細な説明が書かれています。
  お時間に余裕がございましたら、ご覧くださいませ。 

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 【次号予告クイズ】

 Q31.兄、海幸彦の釣り針を飲み込んでいたのはどの魚だったでしょう?
  1.タイ
  2.サンマ
  3.サメ

 答えは、次号を読めば分かります。
 次号「海幸彦の服従」をお楽しみ〜

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