<第34話 東遷>
「一体、どこの地にいたら安らかに天下を治めることができるのだろう?」
「ここはやはり東のほうに都をおいたらどうだろう」
カムヤマトイハレビコノミコトとその兄、イツセノミコトは今後のことを話し
合った。
まず、日向国(鹿児島・宮崎)を立ち、
豊国(大分)の宇佐の足一騰宮(あしひとつあがりのみや)
筑紫国(福岡)の岡田宮に一年
安芸国(広島)の多祁理宮(たけりのみや)に七年
吉備国(岡山)の高島宮に八年
と徐々に東遷していった。
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宇佐に行く前に、速吸門(はやすいのと:豊予海峡)での出来事。
「あの亀の甲羅に乗って釣をしているのは誰だろう?」
「ちょっと手招きしてみよう」
「あなたは誰ですか?」
「私は国つ神です」
「あなたは海路をよく知っていますか?」
「はい、よく存じ上げております」
「私たちに仕えますか?」
「は、喜んでお仕え申し上げましょう」
「ありがとう、これからはサヲツネヒコ(棹根津日子)と名乗るといいでしょ
う」
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「申し上げます!」
「どうした」
「登美(奈良市富雄町)の豪族、ナガスネビコ(那賀須泥昆古)が軍勢を率い
攻めかかって参りました!」
「何? よし、みなのもの、盾を持ち船から降り、迎え撃て!」
「ははっ」
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「ぐわっ!」
「イツセノミコト様!」
「うぅぅぅ」
「大丈夫ですか!」
「くっ、私は日の神の御子なのに、日に向かって戦ったのが良くなかった」
「すぐに手当てを!」
「だから、いやしい奴の矢で手を怪我してしまった」
「あぁ、これはひどい」
「ええい、これしきの怪我大丈夫だ」
「しかし、この出血では無理をなさらぬ方が…」
「うるさい、今から遠回りをして、日を背にして敵を撃つのだ!」
「ははっ」
…………………………………
「イツセノミコト様、この池で傷をお洗いください」
「うむ」
「残りの行程ももう少しでございます」
「ぐっ、ふぅ、そうか」
「本当に大丈夫でしょうか?」
「あ、あぁ、さぁ、行くぞ」
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「ふぅふぅ、はぁはぁ」
「イツセノミコト様、もう無理をなされますな」
「ぐっ、はぁはぁ」
「一刻も早く手当てをされなければお命にかかわります!」
「ふぅふぅ、も、もうすぐ紀伊国(和歌山)だろう、そこまでの辛抱だ」
「し、しかし…」
……………………………………
「くっ、もうすぐだというのに、ぐはっ!」
「イツセノミコト様!」
「いやしい奴のために手傷を負って私は死ぬのか…」
「しっかりしてください!」
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
「イツセノミコトさまぁぁぁ」
イツセノミコトの御陵は紀伊の国の竈山にある。
<参考文献>
岩波書店:古事記(倉野憲司校注)
講談社学術文庫:古事記(上)全訳注(次田真幸)
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*このページは古事記との違いや、さらに詳細な説明が書かれています。
お時間に余裕がございましたら、ご覧くださいませ。
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