<第39話 タギシミミノミコトの謀反>

 「神武天皇が崩御なされました!」

 「あぁ、あなた」

 「父君…」

 神武天皇には、日向にいたときの妻、アヒラヒメの子、タギシミミノミコト(当
 芸志美美)と、カシハラノミヤで即位した際に、皇后にしたイスケヨリヒメか
 ら生まれた三人の息子がいた。

 「父である神武天皇が亡くなられたからには、長兄であるこの私が跡を継ぐの
  がふさわしいと思うが、どうだ?」

 「…」

 「ふん、誰も反対しないところを見ると、文句はないようだな」

 「…」

 「そして、天皇になる私の后には、先の皇后、イスケヨリヒメにする!」

 「!!」

 突然のタギシミミの言葉に、驚きを隠せないイスケヨリヒメと三人の息子たち。
 
 「それでは、今からイスケヨリヒメとの婚儀を行う。母上、いえ、ヒメ、こち
  らへ!」

 ………………………………
 
 義理とはいえ、息子であるタギシミミに妻にさせられるイスケヨリヒメ。

 (私はこれからどうなってしまうのだろう?)

 思い悩んでいるときに、タギシミミと家臣の声が聞こえてきた。

 「…ぬかるなよ」

 「…はい、誰にも気づかれずに闇に葬ります」

 「…ふふふ、邪魔な弟たちが死んでしまえば、わしの地位も安泰だ」

 「左様でございますな」

 (な、なんと恐ろしいことを! 私のかわいい子供たちの命が危ない!)

 「これを息子たちに渡しておくれ」

 愛する息子たちの危険を察知したイスケヨリヒメは手紙を届けさせた。

 ………………………………

 「母上から手紙が届いたぞ」

 「何て書いてある?」

 「うん? 歌が2首入っているぞ」

 「どれどれ」

 狭井河よ 雲立ちわたり 畝火山 木の葉さやぎぬ 風吹かんとす
 
 畝火山 昼は雲とゐ 夕されば 風吹かむとそ 木の葉さやげる

 「おい!」

 「…こ、これは」

 「あぁ、タギシミミが俺たちを殺そうとしている」

 「母上はそれを知らせようと…」

 「兄さん! こうしてはいられない。一刻も早く兵を集め、タギシミミを殺さ
  ないと我々が殺されてしまう」

 「そ、そうだな。よ、よし、兵を集めよ。」
 
 すぐに兵を集め、義理の兄、タギシミミを殺しに向かった息子たち。
 三人の兄弟の2番目の兄が兵を連れ、タギシミミを討とうとするが…

 「さぁ、兄さん、今だ!」

 「あ、あぁ」

 「どうしたんだ! 兄さん! 早くしないとタギシミミに気づかれますよ!」

 「わ、分かっている」

 「何をぐずぐずしているのですか!」

 見ると、兄の手足はブルブル震え、体がすくんで動けないでいた。

 「兄さん、兵たちを借りますよ!」

 こうして、カムヌナカハミミノミコト(神沼河耳命)は、タギシミミを殺した。

 「…弟よ、私は敵を殺すことができなかった。しかし、お前はそれができた。」

 「…兄さん」

 「私は兄であるが、上に立つべきではない。だから、お前が天皇になって天下
  を治めなさい」

 「何をおっしゃいますか」

 「私はあなたを助けて、祭事をつかさどる者となってお仕えいたします」

 こうして、カムヌナカハミミは第2代綏靖天皇になった。
 神武天皇は137歳まで生き、畝傍山の北に葬られた。
 
 <参考文献>
 岩波書店:古事記(倉野憲司校注)
 講談社学術文庫:古事記(上)全訳注(次田真幸)

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 【キリのコメント39】

 *このページは古事記との違いや、さらに詳細な説明が書かれています。
  お時間に余裕がございましたら、ご覧くださいませ。 

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