<第41話 タケハニヤスノミコの反逆>
「オホビコノミコト(大昆古命)、ただいま高志道(コシノミチ:北陸道)を平
定して参りました」
「うむ、ご苦労」
「その子、タケヌナカハワケノミコト(建沼河別命)、東の方十二道を平定して
参りました」
「うむ」
「ヒコイマスノミコ(日子坐王)、丹波の国(京都)のクガミミノミカサ(玖賀
耳之御笠)を退治して参りました」
「さすがだな」
「崇神天皇、妙なことがあったのですが…」
「何だ、オオビコよ」
「私が高志国へ向かう途中で少女に出会いました。その少女が奇妙な歌を歌っ
ていたのです」
「それはどんな歌だったのだ」
「天皇の命を狙っている人がいるという歌です」
「何!?」
「私がその少女にその歌はどういう意味なのか、尋ねたところ、『ただ、歌を歌
っただけ』と言って、すぐに姿が消えてしまいました」
「ふーむ、もしかして…」
「何かお分かりになりましたか?」
「これは山城国(京都南部)にいるあなたの異母兄のタケハニヤスノミコ(建
波邇安王)が謀反の野心を起こしたに違いあるまい。伯父上よ、今すぐ軍勢
を整えて、征伐に行っていただけぬか?」
「かしこまりました」
「そうだ、このヒコクニブクノミコト(日子国夫玖命)をつれていかれるとい
い」
「ありがとうございます、さっそく兄を征伐して参ります」
「うむ、頼んだぞ」
ヒコクニブクは丸邇坂(わにさか)で斎み清めた酒瓶を据えて神を祭ってから
山城に向かった。
そして、山城の和珂羅河(わからがわ)にやってきたときに、タケハニヤスは
軍勢をすでに整え、行く手を遮り待ち受けていた。
「まずは、そちらから開戦の合図の矢を放て!」
「よかろう」
しかし、そういってタケハニヤスが放った矢は、誰にも命中しなかった。
「次はわしの番だ!」
ヒュォッ
「ギャッ!」
「タケハニヤス様!」
「うわぁぁ、もうダメだ、逃げろ!」
こうして、タケハニヤスを失った軍勢は総崩れになって、逃げ惑った。
中には、クソが出て、はかまにかかったものもいた。
さらに、逃げる軍勢の行く手をさえぎって斬りつけたので、死体が鵜のように
川に浮かんでいたという。
「ただいま、兄、タケハニヤスを討伐してまいりました」
「うむ、ご苦労」
こうして、崇神天皇は、天下は太平になり、国民は富み栄えた。
そこで、その治世をたたえて、「初国知らししミナキノスメラミコト(御真木天
皇)」と呼ばれた。
そして、天皇は168歳まで生き、山辺の道の勾(まがり)の岡のほとりに御稜
を建てた。
<参考文献>
岩波書店:古事記(倉野憲司校注)
講談社学術文庫:古事記(上)全訳注(次田真幸)
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*このページは古事記との違いや、さらに詳細な説明が書かれています。
お時間に余裕がございましたら、ご覧くださいませ。
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