<第42話 ある愛の物語1〜サホビメの苦悩〜>
「妹よ、天皇とわたしどちらをいとおしく思う?」
「もちろん、兄さんよ」
「…そうか」
「どうしたの。こんなこと聞いて」
「そうか、私か…」
「…兄さん?」
「本当に私のほうがいとおしいか?」
「どうしたの、改まって。そうよ、兄さんよ」
「…本当に私の方がいとおしいと思うのならば、私とお前で天下を治めようで
はないか!」
「…何を言っているの? 兄さん」
「お前にこれをやる」
「???」
「この小刀で天皇が寝ているとき刺し殺せ!」
「!!」
「私の方がいとおしいのだろう、サホビメよ。ならば、兄の願いをかなえてほ
しい」
「…」
「頼んだぞ!」
……………………………………
スー スー スー
何も知らない垂仁天皇は、后サホビメのひざで眠っていた。
(今よ!)
兄、サホビコからもらった小刀で夫である天皇の首を刺そうとするサホビメ。
もう、すでに2度試みるもできずに、今、三度小刀を振り上げる。
(あぁ、やっぱりダメ。私にはこの人を殺すことができない)
ポタッ ポタッ ポタッ
愛する夫をこの手で殺すことなどできるはずもなく、悲しい気持ちが沸き起こ
り、涙がこぼれ、天皇の顔に落ちていった。
「うわぁ!」
「…」
「ふぅ、不思議な夢だった」
「…」
「急ににわか雨が降ってきて、私の顔をぬらし、また、錦色の小さい蛇が私の
首にまとわりついた。この夢は何を意味しているのだろう」
「…」
「ヒメ? どうしたのだ?」
「その夢の意味はこうです…」
とても隠し通せないと思ったサホビメは、兄との出来事を天皇に全てを打ち明
けた。
軽い気持ちで兄と答えたことで起こった悲劇のあらましを…
<参考文献>
岩波書店:古事記(倉野憲司校注)
講談社学術文庫:古事記(上)全訳注(次田真幸)
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*このページは古事記との違いや、さらに詳細な説明が書かれています。
お時間に余裕がございましたら、ご覧くださいませ。
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