<第45話 ホムチワケノミコ1>

 「御子よ、こっちへおいで」

 「どうだ、御子よ、おもしろいだろう」

 「御子よ、これをご覧」

 「…これもダメか」

 サホビメから生まれたホムチワケノミコ(本牟智和気王)は、ヒゲが胸元に届
 くような年齢になっても言葉を話さなかった。

 そこで、天皇は、船を作って池に浮かべたりして、いろいろ遊びにつれていっ
 たが、それでも御子は一言も言葉を話さない。

 「あぎ」

 そんなある日、白鳥の声を聞いた、御子は片言とはいえ言葉を発した。

 「御子がお話になりました!」

 「そうか、もしかしたら、その白鳥を見たら、御子はもっとしゃべるかもしれ
  ん。すぐにその白鳥を捕らえるのだ!」

 「かしこまりました」

 そこで、天皇の命を受けた、ヤマノベノオホタカ(山辺之大鷹)はその白鳥を
 追いかけ、紀の国、播磨の国、因幡の国、丹波の国、但馬の国、近江の国、美
 濃の国、尾張の国、信濃の国と国々をわたり、ついに越の国でわなをしかけ、
 白鳥を捕らえることができた。

 「ついに、白鳥を捕まえることができました。これがその白鳥でございます」

 「そうか、よくやった。これで御子も物をしゃべるだろう」

 しかし、白鳥を見た御子は天皇の期待通りに物をしゃべることはなかった。

 「なぜ、我が御子は言葉をしゃべらないのだろうか…」

 心を痛めた天皇は、寝ていたときに、夢でお告げをうけた。

 「私の神殿を、天皇の宮殿のように立派に造ったならば、御子は必ず言葉をし
  ゃべるだろう」

 そのお告げを聞いた天皇は、翌朝さっそくこのお告げを伝えた神が誰なのか、
 フトマニ(太占)で占った。

 「その神は、出雲の大神でございます」

 「それでは、さっそく御子を出雲大社に向かわせよう。ところで、誰を御子に
  従わせて遣わしたらよいのであろう。占ってくれぬか」
 
 「かしこまりました。」

 占った結果、アケタツノミコ(曙立王)が当たった。

 そこで、アケタツノミコに誓約(うけい)をさせた。

 「この大神を拝むことで、本当にしるしがあるならば、鷺巣池の木に住む鷺よ、
  この誓約によって落ちよ!」

 バサッ

 すると、誓約をうけたその鷺は池に落ちて死んでしまった。

 「誓約によって生きよ!」

 バササッ

 すると再び鷺は生き返った。
 
 今度は甘橿丘(あまかしのおか)の崎に生えている葉の広い樫の木を、誓約に
 よって枯らし、また生き返らせた。

 「では、アケタツノミコよ、そなたの弟、ウナカミノミコとともに、御子のこ
  とをよろしく頼むぞ」

 「かしこまりました」

 御子とともに、出雲に向かおうとしたアケタツノミコとウナカミノミコはどの
 ルートを通って出雲の国に行く方がよいか話し合った。

 「奈良山越えの道はどうか?」

 「その道から行くと足のなえた人や盲人に出会い不吉だ」

 「では、大阪越えの道はどうだろう?」

 「ここも同じだろう」

 「では、紀伊を越える道は?」

 「そこなら縁起がいいだろう」

 こうして、紀伊の道から出雲の国を目指した。

 <参考文献>
 講談社学術文庫:古事記(上)全訳注(次田真幸)

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 【キリのコメント45】

 *このページは古事記との違いや、さらに詳細な説明が書かれています。
  お時間に余裕がございましたら、ご覧くださいませ。 

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