第24話 佐々成政の陰謀

 シトシトシト…

 「ふぅ、遅くなったわい」

 正月中旬、佐々成政の居城がある比良の東に大きな堤があり、そこを又左衛門
 という男が歩いていた。

 「うん?」

 又左衛門が堤を歩いていると…

 「う、うわぁぁぁ!」

 …………………………………

 「はぁはぁはぁ…」

 「ど、どうしたんだ?」

 「ば、化け物が!」

 「何だって」

 「太さ一抱えもある黒い化け物が…」

 …………………………………

 「お館様、今、町では化け物に出会ったという噂でもちきりです」

 「ほぅ、おもしろそうだな。その化け物を見たという者をすぐつれて来い」

 「かしこまりました」

 ……………………………………

 「お前が又左衛門か?」

 「は、はい」

 「お前が見た化けの物について話して聞かせろ」

 「そ、それは恐ろしいものでした。顔は鹿のようで、目は星のように光り、目
  と舌がきらきら光っているのが見え、身の毛もよだち、あまりの恐ろしさに
  逃げ出したというわけです」

 「そうか。よし、明日、蛇かえを行うぞ! 比良の郷、大野木村、高田五郷、
  安食村、味鏡村の百姓たちは、水汲み桶、鋤、鍬を持って集まるよう伝えよ」

 「かしこまりました」

 翌日、あまが池の四方から4時間あまり水かえをし、池の水が7分ばかり減っ
 ても、それから先は一向に水が減らなかった。

 「化け物らしきものはございませんな」

 「ふーむ、では私がもぐって調べてみよう」

 そういうと、信長自ら脇差を口にくわえて、池の中にもぐった。

 「いかがでしたか?」

 「ダメだ、見つからない。鵜左衛門はいるか?」

 「ここに」

 「お前は泳ぎが上手だと聞いた。もう一度もぐって調べてみよ」

 「はっ!」

 ………

 「大蛇はいませんでした…」

 「そうか。仕方ない、清洲に帰るぞ!」

 ……………………………………

 「信長は帰ったようです」

 「…そうか」

 「ふん、命拾いをしたな」

 「おい、井口、めったなことを申すな」

 「殿、何をおっしゃいますか。信長はこの城を気に入り、殿に腹を切らせ、奪
  おうと思っていたのではないですか」

 「それはただのうわさだったであろう」

 「まぁ、そうでしたな。もし、本当ならば、このわしが大蛇を探しに来た信長
  を船に乗せて、小姓たちがいてもかまわず脇差で刺し殺してやろうと思って
  おったのにな」

 「もうよい。このことは他言無用だぞ」

 「…分かり申した」

 こうして、信長は佐々成政の陰謀を逃れることができた。

 <参考文献>
 ニュートンプレス:信長公記(太田牛一:原著 榊原潤:訳)
 角川ソフィア文庫:信長公記(奥野高広、岩沢愿彦 校注)
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 【キリのコメント24】 

 *このページは信長公記との違いや、さらに詳細な説明が書かれています。
  お時間に余裕がございましたら、ご覧ください。

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