第30話 岩倉落城

 「信安は死んだか」

 「はっ、確かのようでございます」

 「今こそ岩倉を攻め落とす好機だな。しかし、あの城は要害の地にある…」

 「いかがいたしましょう」

 「そうだな、岩倉の後ろ三里(12キロ)の場所にある浮野に軍兵を出して備え
  るのだ」

 「かしこまりました」

 永禄元年(1558)七月十二日正午。
 信長は東南に向かって岩倉城に攻めかかった。

 そのとき、岩倉方には林弥七郎という弓の名手がいた。
 彼が弓をかかえてしりぞこうとしているところへ、信長の鉄砲の師匠、橋本一
 巴が渡り合った。

 二人は旧知の仲だったので、林の方から言葉をかけた。

 「橋本殿、見逃しはせぬぞ。覚悟せよ!」

 「心得ておる」

 そう答えると、互いに弓と鉄砲でお互いを射た。

 ヒョウッ

 林の放った矢は一巴の脇の下に深々と刺さった。

 バァーン

 一巴も筒を肩にあてて鉄砲を同時に放つ。
 
 「グワァッ」

 弥七郎はうち倒れた。

 「今だ!」

 そこへ、信長の小姓衆である佐脇藤八が走りかかって、林の首を討とうとする。

 スラリ

 「甘いわ、こわっぱ」

 そういうと、向かってきた藤八の左のひじを鎧の小手ごと上から打ち落とした。

 「グッ、クソッ!」

 しかし、藤八はひるまず弥七郎に組み付き、ついに首を取った。

 「林弥七郎、佐脇藤八が討ち取ったり!」

 翌日、信長は首実検をし、そこには屈強な侍の首数が千二百五十あった。

 「これでもう、岩倉はおしまいだな」

 翌永禄二年初春ごろ。

 「今から岩倉を攻め滅ぼす。者ども用意はいいか!」

 「ははっ!」

 そう号令をした信長は、岩倉を包囲し、町に放火し、はだか城にしてしまった。

 「四方に鹿垣(ししがき:竹木の枝で編んだ垣)を二重、三重に厳しく建てろ!」

 さらに、番人を周囲に配置し、二、三ヶ月ほど、陣から火矢・鉄砲を打ちいれ
 た。

 「お館様! 城内から降伏の使者が参りました!」

 「そうか、ここへ通せ」

 城内の者どもは、これ以上城を持ちこたえるのは不可能と考え、城の明け渡し
 を申し出、ちりぢりに思い思いに城を立ち退き、その後、岩倉の城は取り壊さ
 れ、信長は清洲に戻った。

 こうして、信長は桶狭間の合戦前に尾張を統一することができた。

 <参考文献>
 ニュートンプレス:信長公記(太田牛一:原著 榊原潤:訳)
 角川ソフィア文庫:信長公記(奥野高広、岩沢愿彦 校注)

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