第31話 森部合戦

 時は永禄三年五月。
 桶狭間の合戦で、今川義元を討ち取った信長は、すぐさま美濃に圧力をかける
 べく木曽、飛騨川の大河を三艘の船で越え、西美濃へ出陣した。

 その中には、桶狭間で首3つ取ったにもかかわらず、信長の勘気を解くことが
 できなかった前田又左衛門利家の姿もあった。

 「桶狭間でもお館様の勘気を解くことができなかった。今度の合戦でお館様が
  お喜びになるような大将の首を取らなければ…」

 その日は、勝村に陣をはった。
 翌日は雨が降ってきた。
 
 「申し上げます! 墨俣から、斉藤軍、長井甲斐守、日比野下野守を大将にし
  て攻めて参りました!」

 「よし、これこそ天より与えられた好機である。者ども、にれ俣川を渡り、攻
  めかかれ!」

 「ははっ!」

 合戦は数時間に及び、相手の大将、長井、日比野ともに討ち取られてしまった。
 このときの美濃軍で討ち取られた人数は170人にも達した。
 
 「おっ、あそこにいるのは、足立六兵衛ではないか。相手にとって不足なし。」

 槍をしごいて六兵衛にかけよる又左衛門。

 「そこにおわすは、首取り足立とお見受けした。一手お相手願いたい!」

 「よかろう。して、そこもとの名は?」

 「槍の又左でござる!」

 「又左殿か、楽しませてくれよ!」

 エィ

 ヤッ

 グサッ

 「首取り足立、この又左衛門が討ち取ったり!」

 (これでお館様の勘気が解ければいいが…)

 「お館様、又左衛門殿が、首二つを持って訪れておりまするが…」

 「うむ、通せ」

 信長の前に首取り足立の首ともう一つの首を持って現れた又左衛門。
 
 「その首は?」

 「はっ、足立六兵衛の首でございます」

 「ほぉ、美濃で知らぬ者もいないという首取り足立ではないか。ご苦労。帰参
  を許そう」

 「ま、誠でございまするか?」

 「あぁ、こたびの働き天晴れである」

 「ありがたき幸せ!」

 こうして、このたびの戦功によって前田又左衛門利家はご赦免になった。

 <参考文献>
 ニュートンプレス:信長公記(太田牛一:原著 榊原潤:訳)
 角川ソフィア文庫:信長公記(奥野高広、岩沢愿彦 校注)

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