第33話 小牧山に移る
「お館様は、われわれをつれどこに向かおうとされているのか?」
「うむ、こんな山中に何があるのだろうか」
あるとき、信長は、身内の衆をことごとく引き連れ、山中の高所、二の宮山に
登った。
「この山に要害を構築するように」
「な、なんとおっしゃいましたか!?」
「ここに要害を構築するようにいったのだ。そして、みなここに屋敷を引越し
させよ」
「!?」
驚く身内の衆をはた目に、ここの峰、あそこの谷あいは誰々が作れと屋敷の割
り当てなど具体的な指示を出す信長。
「よし、では今日は帰るぞ」
(お館様は本当にここに要害を築き、本拠をお移しになられるのだろうか?)
半信半疑の身内衆。
しかし、信長はその翌日も二の宮山に来て、ますます引越しの指示を出した。
(どうやらお館様は本気らしい)
(しかし、この山中へ清洲の屋敷を引っ越すのは本当に難儀なことだなぁ)
信長の命令にみな迷惑がった。
「小牧山に引っ越そう」
「本当でございますか!」
「あぁ、二の宮山への引越しは中止だ。」
「小牧山ならば、山のふもとまで川が続き、家財道具を運ぶのも容易で、みな
も喜ぶでしょう!」
「そうか、ではすぐにでも引っ越すようにみなに伝えよ」
「かしこまりました!」
こうして、二の宮山から移りやすい小牧山に変更になって、みなどっと喜び引
越しも一気に進んだ。
(わしの作戦が当たったな)
最初から小牧山に引っ越すことをいったならば、やはりみな反対しただろうと
思った信長は、最初もっと過酷な場所への引越しをいったのである。
「申し上げます! 小牧山に信長が築城を始めました」
「何! 小牧山とこのお久地の地は、わずか20町の位置にあるではないか。
このままではこの地を支えることは難しいな」
「いかがいたしましょう?」
「ふーむ、ここはこの城を明け渡し、犬山の城と合流した方がいいな」
こうして、小牧山に城下を築くことで、敵を徐々に追い詰めることになった。
<参考文献>
ニュートンプレス:信長公記(太田牛一:原著 榊原潤:訳)
角川ソフィア文庫:信長公記(奥野高広、岩沢愿彦 校注)