「第34話 宇留摩、猿ばみ城攻略」
「次は、宇留摩城、猿ばみ城をどう攻略するかだな」
この両城は犬山城の川向こうに並んである城で、宇留摩城には、大沢基康、猿
ばみ城には、多治見修理が城主としていた。
「申し上げます。北美濃の加治田の領主、佐藤紀伊守の使者で岸良沢と申すも
のがこの丹羽五郎左衛門の元に参りました」
「ふむ、五郎左のところにか。して、そのものは何と言っておる」
「はい、加治田のことは、お館様にすべてお任せするとのことでございます」
「そうか。ふふ、まず兵糧を調え、蔵に入れておくよう伝えよ」
「はっ」
「そのために黄金五十枚を岸に渡すがよい」
「かしこまりました」
さらに、あるときのこと。
「お館様に申し上げます」
「なんだ、五郎左」
「犬山城の両家老がお館様に忠誠を尽くしたいと私に言ってきました」
「そうか、そのまま両人を味方に引き入れ、お前は犬山城をはだか城にし、四
方に鹿垣を二重、三重に結い囲んで、警固にあたれ」
「かしこまりました」
それから少したったあるとき、信長は飛騨川を越え、美濃の国に攻め入った。
「今こそ、宇留摩城を攻略するぞ」
「おぉ!」
「あそこに見える山は何という?」
「伊木山と申すそうです」
「よし、あの山に登るぞ」
この伊木山とは宇留摩城から十町あるいは十五町隔ててある山である。
「うむ、ここからだと、宇留摩、猿ばみの両方とも見下ろせるな」
「誠でございます」
「よし、ここに丈夫な要害を築くのだ」
「かしこまりました」
こうして、上から見下ろされる形になった宇留摩城の者たちは、これ以上支え
がたいと思い、城を明け渡してしまった。
「次は、猿ばみ城だな」
「いかがいたしますか?」
「猿ばみ城の上手にあるあの草木の茂った高所は何という?」
「大ぼて山と申すようです」
「ふむ、五郎左、今から行ってあの山を攻めとってこい」
「かしこまって候!」
丹羽五郎左衛門が大ぼて山を攻略してみると、この山が猿ばみ城の水の手だっ
たことが分かった。
「水の手を押さえられてはもう城を支えられぬ」
「しかも、大ぼて山からも攻められてしまう」
「…降参するしかあるまい」
こうして、猿ばみ城の兵は困窮し、降参して城を退散した。
<参考文献>
ニュートンプレス:信長公記(太田牛一:原著 榊原潤:訳)
角川ソフィア文庫:信長公記(奥野高広、岩沢愿彦 校注)