| 黄昏 1951・米 | |
![]() 製作:監督: ウィリアム・ワイラー 原作:セオドラ・ドライサー 脚本:ルース・ゲイツ オーガスタ・ゲイツ 撮影:ヴィクター・ミルナー 音楽:デヴィット・ラクシン 出演:ローレンス・オリビエ ジェニファー・ジョーンズ ミリアム・ホプキンス エディ・アルバート ベイジル・ルイスデール レイ・ティール ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |
物語 シカゴにいる姉夫婦を訪ねるためミズーリ州コロンビア市から列車に乗ったキャリー(ジェニファー・ジョーンズ)は列車で同席したドルーエ(エディ・アルバート)に話しかけられた。 ドルーエはしつこく粘っこい。キャリーは適当にあしらった。 キャリーはシカゴの姉夫婦の家に世話になるが、靴工場で働き始めた。過酷な労働だった。ある日キャリーはミシンで指を怪我してしまう。それは同時に工場を首になることを意味していた。 キャリーは列車で出合ったドルーエを訪ねた。「雇っていただけない?」女性は使わないんだと言いながらドルーエは親切に10ドルを貸してくれた。昼食の約束とともに。 シカゴの一流レストラン『フィッツジェラルド』。ドルーエはそこの支配人ジョージ・ハーストウッド(ローレンス・オリビエ)をキャリーに紹介する。口髭のある立ち居振る舞いに品がある中年の紳士だ。 ドルーエは強引にキャリーをアパートに連れて行く。そして同棲生活を始めてしまう。 ハーストウッドが訪ねてきた。3人でトランプ遊びに興ずる。 ドルーエが出張で留守の間、キャリーはハーストウッドと観劇に行く。「椿姫」だ。「又、会える?」 ハーストウッドが囁いた。二人は幾度も逢瀬を重ねるうちに相手に惹かれていく。 しかし、ハーストウッドは妻子がいた。それをキャリーには内緒にしていた。冷たい女房と娘と息子。夫婦は常にいがみ合っていた。 ハーストウッドはキャリーと会っている時が幸せを感じる時間だった。 「狂おしいほど君が欲しい」 「もっと早く貴方と出会えていたら・・・」 「もう君なしでは生きていけない」 「私も同じ気持ちよ」 「キャリー、彼と別れてくれないか」 「いいわ」 ドルーエが出張から帰ってきた。彼はハーストウッドが妻帯者であることをキャリーに告げたのだ。「嘘よ!」 キャリーは驚愕した。 キャリーはハーストウッドに詰め寄った。「本当?奥様も子供もいるって」 「・・・キャリー」 「全部本当のことなのね、私を安っぽい女だと思ったのね、馬鹿にしないで!」 「待ってくれ!話がある」 キャリーはドルーエのアパートに逃げ帰った。 ハーストウッドは妻ジュリア(ミリアム・ホプキンス)と言い合った。「やっと、私を愛してくれる人を見つけた。一緒になる」 「そんなことさせないわ」 「邪魔はさせん!」 「子供達になんていうの?」 「もう大人だ、分かってくれる」 店ではドルーエが待っていた。「よくも僕を裏切ってくれたな!明日正式に結婚する」 ハーストウッドはあせった。 ハーストウッドが家に帰ると店の社長が来ていた。「変な女に引っかかったらしいな。これからは給料をジュリアに渡す。金が無ければ女も他の男を探すだろう」 ジュリアが社長に全部報告していたのだ。 ハーストウッドは店の金1万ドルを盗んだ。キャリーの部屋のドアを叩く。 「話があるんだ、開けてくれ」 「帰って!もう二度と会わないわ!」 キャリーの声がする。「違うんだ、ドルーエが怪我をした。君に会いたがってる」 ハーストウッドは嘘をついた。 ハーストウッドは病院に行くといい、キャリーを列車に乗せる。結局ハーストウッドの嘘がばれた。「君を失う前に話したかったんだ。最後の手段だった」 列車がイーグルウッドに着く。「私を愛してないならここで降りればいい。だが愛してるのなら・・・」 キャリーはデッキで心が激しく揺れる。ベルが鳴り列車が走り出した。キャリーは降りなかった。二人は激しく抱き合った。 二人はホテル生活を始める。ハーストウッドがキャリーに翼の広い帽子を買って帰る。キャリーが喜ぶ。「幸せかい?」 「幸せよ私を見れば分かるでしょ」 その時、ドアを叩く音。ハーストウッドがドアを開くと男が立っている。 「保険会社の者です。いくら持って失踪しました?貴方がやったことは泥棒なんですよ」 ハーストウッドは9300ドルを返し事なきを得た。「国中のレストランに通達されている筈だ。貴方のような人が何故こんなことを・・・」 男は捨て台詞を残して帰って行った。 「何があったの?」 キャリーはハーストウッドの顔色を見て言う。「破産した。もう50ドルしか残ってない」 「・・・もっと悪いことかと思ったわ」 「私はいい、君がいるから、だが君は・・・何がある」 「貴方がいるわ。良い仕事が見つかるわよ。明日安いアパートを探してみるわ」 だが世間は甘くは無い。ハーストウッドは見付けたレストランで働き始めると、次々と店を首にされた。『フィッツジェラルド』でのハーストウッドのことが知れわたっているのだった。 そんなある日、ジュリアが弁護士を伴ってアパートにやって来た。 「ご子息が結婚されるんです」 弁護士は言った。家を売却してアパート式ホテルに移るのだそうだ。「そのためのサインが必要なのです」 「1万1000ドルということは一人5500ドルだな」 ハーストウッドが言うと「いや、奥様が全額です」 「サインするからには折半だ」 「サインしてくれなければ重婚罪で刑務所行きね」 ジュリアが冷たく言い放つ。 1年前に離婚していると思っていたキャリーは叫ぶ。「お願いです。離婚してください!」 二人が部屋を離れたとき弁護士はジュリアに提案する。「ご主人を刑務所に送ってもお金は手に入りません。2500ドル渡すということで手を打たれては?」 「・・・」 ジュリアが渋々承知しようとしたとき、ハーストウッドが入ってきた。「条件を出す」 「いくらお望みで?」 「離婚を承諾してくれたらあとは何もいらん」 「すぐに手続きを」弁護士は言った。 一度は妊娠したキャリーは流産した。「これでいいんだ。子育てには手がかかる。今の僕らにはとても無理だ」 ハーストウッドはキャリーを慰める。「喜んでるのね」 「違う、生活が安定したら産めばいい」 「貴方が店を持ったら?・・・80歳になったら?」 今のキャリーはとても素直になれないのだった。 「つらいが今に必ず立ち直ってみせる」 ハーストウッドはそう答えるしかなかった。 キャリーはある劇場でオーディションを受け小さな役にありついた。 そんな折、新聞に出ていた記事。『ハーストウッドジュニア、夫妻本日港に到着』 ハーストウッドの息子が海外から帰国するとの記事だった。キャリーの勧めでハーストウッドは港へ行く。息子に会えば道が開けるかもしれない。「仲が良かった。いい子でね」 髭をそり正装したハーストウッド。「今なら息子も分かってくれるだろう」 「このチャンスを逃さないで」 キャリーはハーストウッドを送り出すとドアにもたれて泣いた。もはやハーストウッドと会うことはないだろう。 港でタラップを降りてくる息子を見たハーストウッドは落ちぶれた自分の姿を見られたくない。どうしても息子の前に出て行けないのだった。 アパートに帰ると置手紙があった。『さよならジョージ。息子さんと幸せになって・・・キャリー』 キャリーは劇場で順調に役を勝ち取っていき、とうとう主役の座を得るまでになった。そんなキャリーをドルーエが訪れた。 「彼が金を盗んだときは彼もたいしたもんだと思ったね」 「金を?!」 「知らなかったのかい?知らんのは君だけだ。返さなかったら10年は刑務所行きだった」 キャリーは初めて知った。私のためにそこまでしたのか。「・・・私が彼を破滅させた・・・」 キャリーがアパートに行くとハーストウッドはそこにはいない。あの後すぐに追い出されたとのことだった。「汚れた服を着てひどい姿だったらしいわ」 隣人は言った。 ハーストウッドは日雇い労務者の住む小屋にいた。病気がちで髭は伸びやつれ果てていた。ボロボロの服を着て町を彷徨する。 劇場の看板にキャリーの主役の顔があった。『主演女優キャリー・マデンダ』 ハーストウッドは飢えそうだった。思い余ってキャリーの楽屋を訪ねた。驚くキャリー。「探していたのよ」 「今夜だけでいい。助けて欲しい・・・」 「そんな・・・」 「空腹で・・・恵んでくれないか」 キャリーはハーストウッドを部屋に連れて行く。見るとハーストウッドの姿が痛ましすぎた。「何があったの?何故こんな姿に」 「もう忘れた」 「私のせいよ。貴方のしたことを聞いたわ・・・貴方との愛を取り戻したいの」 「君には将来がある・・・これから愛する人を探せば良い。・・・小銭をくれないか」 キャリーは財布を差し出した。 「もっと必要でしょ。オフィスにいってくるわ。料理も届くわ」 キャリーは出て行く。 ハーストウッドは力なく立ち上がり、財布から小銭をひとつ手にすると部屋から出て行こうとした。鏡に写る自分の落ちぶれた姿。そのままハーストウッドはキャリーの部屋から出て行くのだった。 |
| 映画館主から 巨匠ウィリアム・ワイラーがセオドラ・ドライサーの処女小説「シスター・キャリー」を映画化した恋愛悲劇。 田舎娘のキャリーはシカゴの一流料理店の支配人に見初められた。彼は妻子ある身だったがそれを隠していた。店の金を盗み娘と駆け落ちした支配人は探偵に追われ、結局金を返す。 しかも彼は全ての職につけず乞食同然の生活に落ちぶれてしまう。 一方娘は女優としての道を着々と歩んでいた。飢えの余り娘に無心にやって来た男。娘はこの人と二度と別れまいと誓ったが、男は隙をみて小銭だけを手に立ち去るという物悲しい結末。 ウィリアム・ワイラーの丁寧な演出は定評ですが、本作も同様。 主演は「嵐が丘」(’39年)以来再びワイラーと組んだローレンス・オリビエと、「白昼の決闘」(’46年)のジェニファー・ジョーンズ。 当時オリビエは44歳、ジェニファー・ジョーンズは32歳。中年に差し掛かったオリビエは気品があり、後半落ちぶれて人生の落伍者のような風体になってもそこはかとなく気品が漂ってきます。さすがに名優の貫禄。 一方のジェニファー・ジョーンズは32歳の女ざかり。「白昼の決闘」のような汚れ役とは違い恋に翻弄される女を健気に演じています。それでも秘めた芯の強さを窺わせます。 恋愛映画、西部劇、史劇、サスペンス、スリラー、コメディと幅広いジャンルの作品をそれぞれ一級品に仕上げたウィリアム・ワイラーですが、私の一押しは何と言っても「ベン・ハー」(’59年)です。 ローレンス・オリビエに関していえば恋愛映画は似合わないと思っています。私の好みは「スパルタカス」(’60年、監督:スタンリー・キューブリック)と「マラソンマン」(’76年、監督:ジョン・シュレシンジャー)です。オリビエ自身、「マラソンマン」を最も気に入っている作品に上げているそうです。 |
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