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日本の原典〜古事記物語〜 第14号 2003年9月1日発行
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目次
★古事記物語「第14話 因幡のシロウサギ」
★【キリのコメント】
★【次号の予告クイズ】
★【編集後記】
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<第14話 因幡のシロウサギ>
スサノオの子孫、オオクニヌシノカミには、たくさんの兄弟がいた。
しかし、彼らは皆、身を引いて、オオクニヌシに国を譲った。
それはなぜかというと…
…オオクニヌシがまだオオナムヂと呼ばれていたときの出来事。
「因幡の国(鳥取県)にヤガミヒメ(八上比賣)という絶世の美女がいるそう
だぞ。」
「それは本当か。それはぜひ嫁にもらいたいものだ。」
「お前じゃ無理だろう。わしこそヒメの夫にふさわしい。」
「何を言うか、よし、それならば皆でヤガミヒメに会いに行って、彼女に誰が
夫にふさわしいか決めてもらおうじゃないか。」
「そうするか、おい、オオナムヂ(大穴牟遲)。今から因幡に行くから、俺たち
全員の荷物を持ってついてくるんだぞ。」
「は、はい。」
「付き人としてつれていってやる。」
「もしかしたら、ヒメがお前を夫に選ぶかもしれないぞ。」
「アハハハハハ、それはないだろう。」
「それもそうだな。そんなことがあったら俺たちが許しはしないがな。」
「そうだ、そうだ、オオナムヂのくせにそんなことになったらただじゃぁおか
ないぞ。」
たくさんの兄弟たちの荷物を大きな袋に入れて、ヤガミヒメのいる因幡に向か
うオオナムヂ。
こちらは手ぶらゆえに足早にヤガミヒメのいる因幡に向かう神々。
鳥取県の気高の岬を通りかかったときに、丸裸のウサギがうずくまっているの
が目に入った。
「おい、あそこにいるウサギ。」
「ん? あぁ、あの丸裸になっているウサギか。」
「ちょっといたずらしてやるか?」
「いいな。もっと痛い目にあわせてやろう。」
悪巧みをめぐらせながら丸裸で震えているウサギに優しげな表情で近づく神々。
「どうしたんだい。」
「大丈夫か?」
「かわいそうに。」
「痛いだろうに。」
「う〜ん、そうだなぁ、今から言うことをちゃんと行えば、痛みはなくなるぞ。」
「えっ! 本当ですか? ぜひ、その方法を教えてください!」
ウサギのうれしそうな顔を見て、ニヤリと笑う神々にそのあまりの痛さのため
に気づかない丸裸のウサギ。
「それはな、まず海水を浴び、風によくあたるのだ。そうだな、風がよく吹く
高い山の尾根の上に登って伏せるといいだろう。」
「はい、分かりました! さっそく試してみます。どこのどなたか存じません
が、ありがとうございます!」
ザッパーン
勢いよく海に飛び込むウサギ。
「さてと、あとは風をあびればすぐによくなるぞ! 急げ、急げ。」
言われたとおり、海水を浴び、風がよく吹く山に登ったウサギの身に異変が…
「はぁ〜、いい風だなぁ。早くこの痛みがなくなればいいなぁ……。
ん? イ、イタタタタタタタタターーーーーー、ウギャァァァァァ…………」
………………………
「さっきのウサギは今頃どうしているかなぁ」
「きっと悲鳴をあげてるぜ。」
「バカそうなウサギだったからなぁ。俺らの言うことを真に受けて、丸裸の皮
膚に海水を浴びて、風にあたるとはな!」
「痛んだ肌にさらにヒビが入ったことだろうよ、バカなウサギだ。」
「ハハハハハハハハハッ」
………………………
あまりの痛さに身をよじって泣き叫んでいるウサギ。
そこへ兄弟の荷物を背負ったオオナムヂがやってきた。
「どうして泣いているの?」
そこでウサギは自分の今までの境遇を話はじめた。
「僕は隠岐の島の出身なんだけど、島から本州にやって来ようとしたんだ。で
も、本州に来る手立てがなくて、いろいろ考えた結果…こうしたんだ。」
…………………………
「サメさん、サメさん、お願いがあるんだ。」
「ん? どうしたんだい、ウサギさん。」
「ええと、今僕は、君たちサメさんと僕たちウサギがどっちの数が多いか調べ
ているんだけど、協力してくれる?」
「いいよ。それで、どう数えるんだい?」
「もうぼくたちの数は数えてあるんだ。あとは、サメさんたちの数を数える
だけなんだけど、できればみんなを集めてこの隠岐の島から本州までずーっ
並んでくれるかな? そうしたら、僕が君たちの上を歩きながら数を数えよ
うと思うけど、いい?」
「OK! すぐみんなを呼んでくるよ!」
「ありがとう!」
…………………………………
「1・2・3…………356・357・358…………」
(ふふふ、だまされているとは知らないで)
「671・672・673…………よし、あと少しで本州だ!」
(ここからはカウントダウンだ!)
「5・4・3・2・1、ハハハ! やぁ〜い、サメさん、僕にまんまとだまさ
れたね!」
「な、なんだと!」
「僕は本州に来たかっただけなんだ! 君たちの数を数えるなんてどうでもよ
かったんだ〜、ハハハハハ〜」
「よくもだましてくれたな。おのれ、許さん、こうしてくれる!」
「ワ、ワワワァァ……」
………………………………
「もうちょっとで本州にたどりつくところで、つい口を滑らしてサメたちを欺
いていることをしゃべっちゃった僕は、怒ったサメ達につかまり、皮をはが
され丸裸にされたんだ。…当然のむくいだけど。」
「そうだったんだ。でも、それだけじゃぁ、あれほどの悲鳴をあげないと思う
けど…」
「そうなんです。その後、丸裸になって泣いていた僕のそばに、たくさんの神々
がやってきて、『海水を浴びて、風にあたれば治るよ』と教えてくれて、その
通りにしたら、もっとひどくなっちゃんたんです。」
「(やっぱり、兄弟たちか……)…それは災難だったね。よし、私があなたの傷
を治す方法を教えるよ。」
「い、いいですよ…。もう痛い思いはしたくないです。僕が悪かったんです、
サメをだました罰があたったんです。」
「そんなことを言わないで、こうしてごらん。まず、川へ行って水で身を洗っ
て、近くに生えている蒲の花を取って、その粉を撒き散らして、その花粉の
上に寝返りをうって転がれば、君の肌はもとのようにすっかり治るよ。」
「本当? ウソじゃない?」
「本当だよ。かわいそうに。よかったら一緒に川に行くけど。」
「(そこまでしてくれるなんて、この話は本当かも)」
…………………………
オオナムヂと一緒に川にむかったウサギは、川の水で体を洗い、蒲の花を取っ
てそれをまき散らし、その上に寝返りをして転がったところ…
「治った! もう痛くないや!」
「よかったね。それじゃあ、僕は行くよ。」
「ありがとう! あなたはとてもいい人ですね。先にいった神々はきっとヤガ
ミヒメをお嫁さんにできないよ。こうして袋を担ぐなんていやしい仕事をし
ていますが、あなたがヒメをお嫁にできるよ!」
<参考文献>
岩波書店:古事記(倉野憲司校注)
講談社学術文庫:古事記(上)全訳注(次田真幸)
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*このページは古事記との違いや、さらに詳細な説明が書かれています。
お時間に余裕がございましたら、ご覧くださいませ。
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【次号予告クイズ】
Q14.ヤガミヒメをオオナムヂ(後のオオクニヌシ)にとられてしまい怒っ
た神々は、オオナムヂを殺してしまいます。彼らはどうやってオオナム
ヂを殺したでしょう?
1.全員でよってたかって切り殺した
2.火をつけた大石をぶつけて殺した
3.毒をもった食事を食べさせ殺した
答えは、次号を読めば分かります。
次号「オオナムヂ殺害」をお楽しみ〜