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 日本の原典〜古事記物語〜 第15号 2003年9月8日発行
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 目次
 ★古事記物語「第15話 兄弟神の迫害」
 ★【キリのコメント】
 ★【次号の予告クイズ】
 ★【編集後記】
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 <第15話 兄弟神の迫害>
 
 「私はあなた方とは結婚いたしません! オオナムヂ様と結婚いたします!」

 ヤガミヒメの突然の拒絶の言葉を聞き、一様に驚きを隠せないオオナムヂの兄
 弟神。

 「なぜだ。」
 「どうしてまだ会ってもいないオオナムヂのことをヒメはいうのだ。」
 「我らを差し置いてオオナムヂだと。許せん!」
 「そうだ、そうだ。オオナムヂがヒメの夫だと。そんなこと許せるはずない。」
 「どうしてくれよう。」
 「このままでは気が収まらない。…殺すか。」
 「殺してしまおう!」

 ヒメに振られた腹いせにオオナムヂを殺すことにした兄弟神は、伯耆国(島根
 県)手間の山のふもとで後から来るオオナムヂを待ち受け、いつも通り命令し
 た。

 「おい、オオナムヂ。今からこの山に住む赤イノシシを我らが追い落とすから、
  お前はそれをふもとで待ちうけて捕らえるのだぞ。」
 「は、はい、分かりました。」
 「もしも、捕らえられなかったら、そのときはお前を殺すからな。」
 「は、はい」

 突然、殺すと脅され、どうして赤イノシシを捕らえなければならないのかよく
 分からないうちに、命令されてしまったオオナムヂ。

 「それ、いったぞ! しっかり受け止めろよ!(これで死んでしまえ!)」
 
 兄弟神がふもとに落としたのは、赤イノシシではなく、イノシシに似た真っ赤
 に焼いた大石だった。

 ゴロゴロゴロ………

 (来たっ!)

 勢いよく転がっている赤い物体をしっかと受け止めようと全身を身構えるオオ
 ナムヂ。

 バシュゥゥゥ

 真っ赤に焼けた大石を受け止めてしまったオオナムヂは焼け死んでしまった!

 ……………………

 「オオナムヂは大丈夫だろうか…」

 普段から兄弟神に邪険にされていたオオナムヂが心配で、その後を追ってきた
 母親が、伯耆国にたどり着くと…

 「あぁ…」

 そこには無残にも焼け焦げたオオナムヂの死体が…

 「かわいい我が子よ。何てことに」

 焼きただれた見るも無残な我が子の姿を見た母親は、そのまま天に上り、カミ
 ムスヒノカミに会い、息子を助けて欲しいと嘆願した。

 「その願いかなえよう」

 カミムスヒノカミは、キサガヒヒメ(“討の下に虫”貝比賣)とウムギヒメ(蛤
 貝比賣)を遣わして、オオナムヂの治療をして蘇らせた。

 キサガヒヒメは貝殻を削ってその粉を集めて、ウムギヒメはこれをハマグリの
 汁で溶いた母の乳汁を塗ったところ、オオナムヂはうるわしい男子になって歩
 き出した。

 「おぉ、ありがとうございます!」

 …………………

 「なぜ、あいつは生きているんだ!」
 「確かに焼けた大石にぶつかって死んだのをこの目で見たんだぞ!」
 「でも、あいつは元気に歩き回っているじゃないか。」
 「こうなったら、もう一度だましてやつを殺してしまおう。」

 …………………

 確かに殺したはずのオオナムヂが蘇って元気に歩いている姿を見て、驚いた兄
 弟神は、今度は山に呼び寄せて殺そうとした。

 「おい、オオナムヂ、あそこに見える大きな木の中に入れ!」
 「え、なぜですか?」
 「いいから、入れといったら入るんだ!」

 命じられるままに木の中に入るオオナムヂ。
 彼が木に入ったのを確認した兄弟神は…

 「それっ!」

 「ギャッ!!」

 「……今度こそ死んだな?」
 「……あぁ、確かにくたばったようだ」
 「ざまあみろ!」

 ……………………

 「何だか胸騒ぎがする…。オオナムヂは大丈夫だろうか?」

 朝早く兄弟神に山へ連れて行かれるオオナムヂの姿を見ていた母親は兄弟神の
 後を追いかけてみると…

 「あぁ、また…」

 そこには木に挟まれて殺されている無残なオオナムヂの死体が…

 オオナムヂの死体を木から取り出して、同じように蘇らせてもらった母親は、
 オオナムヂの身を案じて我が子に告げた。

 「かわいいオオナムヂよ。お前はここにいたらまた兄弟神に殺され、ついには
  滅ぼされてしまうでしょう。今から木の国(和歌山県)のオオヤビコノカミ
  (大屋昆古神)のところにお逃げなさい。」
 「はい、分かりました。」

 ……………………

 兄弟神に気づかれないように木の国に向かおうとするオオナムヂ。
 しかし、たくさんいる兄弟神の一人に木の国に向かっているのを見つけられて
 しまう。

 「おい、殺したはずのオオナムヂがまた蘇っているぞ。」
 「本当か?」
 「しかも、我々から逃げようと木の国に向かっているようだ。」
 「なんだと、逃がしてなるものか!」
 「おぉ、追いかけて今度こそ息の根を止めてくれる。」

 オオナムヂを追って木の国にやってきた兄弟神は、弓に矢をつがえてオオヤマ
 ビコのもとにやって来た。

 「オオヤマビコよ、オオナムヂがここに逃げ込んでいるのは分かっているんだ。
  オオナムヂを我々に渡して欲しい。」
 「それはなりません。どうぞ、お引取りください。」
 「ならば力づくでも奪い取るまで!」

 兄弟神がまさに攻めかかろうとする中、これ以上オオナムヂをかくまえないと
 思ったオオヤビコは、オオナムヂを木の股から逃がしながら言葉をかけた。

 「ここからスサノオのいる根の堅州(かたす)國へお行きなさい。きっとスサ
  ノオがよき知恵を授けてくれるでしょう。さぁ、早く、早く。」

 オオヤビコにすすめられるままにオオナムヂはスサノオのいる根の国を目指し
 た。

 <参考文献>
 岩波書店:古事記(倉野憲司校注)
 講談社学術文庫:古事記(上)全訳注(次田真幸)
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 【キリのコメント15】

 *このページは古事記との違いや、さらに詳細な説明が書かれています。
  お時間に余裕がございましたら、ご覧くださいませ。

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 【次号予告クイズ】
 Q15.スサノオを訪ねたオオナムヂは、スサノオにだまされて火の海に取り残
    されてしまいます。その状況をどのように脱出した?
 1.クサナギの剣で迎え火をつけて逃れた
 2.穴に隠れて逃れた
 3.雨を降らせて逃れた

 答えは、次号を読めば分かります。
 次号「根の国訪問」をお楽しみ〜

 第16話<根の国訪問へ>

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