第19話 桶狭間の合戦2〜突撃〜
永禄三年五月十九日午前八時熱田神宮。
織田信長陣営。
「お館様! 最早、鷲津、丸根は陥落した模様!」
「うむ」
「いかがいたしまするか?」
「海岸伝いに行けば近道だが、潮が満ちたら馬の通行がままならぬ」
「左様でございます」
「そこで、上手の道を急ぎ丹下の砦に向かう。皆の者参るぞ!」
「おぉ!」
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さらに丹下の砦から善照寺に向かった信長。
「大学、よく無事だったな」
「丸根の砦を奪われ申し訳ござりませぬ」
「気にするな。それで、状況はどうだ?」
「はっ、今川方の兵力はおよそ四万五千!」
「それで、今どこに布陣している?」
「桶狭間山で人馬を休ませているとのことです!」
「うむ、でかした!」
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正午、桶狭間山。
今川義元陣営。
「お館様! 鷲津、丸根砦攻略したとのこと」
「それは満足じゃ。これ、祝いの謡を三番ほど歌え」
「ははっ」
「お館様、家康殿、無事大高に兵糧を運び入れたとのこと」
「うむ、見事な朱武者ぶりであったろうな」
「はい、ただ、現在鷲津、丸根の攻略に手間取り、大高で人馬を休ませている
とのことでございます」
「奴にとっては初陣だ、まぁ、よいだろう」
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「千秋殿、お館様が善照寺にお出でになったらしいぞ」
「そうか、となると我々も後れをとってはならぬな」
「あぁ、尾張の国を今川から守るために我らがすることは…」
「佐々殿、参ろうか」
「おぉ! 今川どもに目にもの見せてくれようぞ!」
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「お館様、織田方の武将、佐々隼人正、千秋四郎を討ち取った模様でござりま
す」
「ふむ、義元が矛先には天魔鬼神といえども防ぐことはできまい。心地よし」
「おっしゃる通りでござりますな」
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「中島に移動するぞ!」
「いけませぬ!」
「なぜだ!」
「中島への道は脇が深田で足をとられ、一騎ずつ縦列でしか進むことができ申
さず」
「それで?」
「こちらの人数が少ないことが丸見えになってよろしくございません」
「かまわぬ」
「なりません! おい、お前たち、お館様の馬のくつわを取っておとめしろ!」
「ええい、離さぬかっ! すぐに中島に移動だ!」
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「兵はどれほど集まった」
「二千ほどかと」
「よし、陣をさらに前に移すぞ!」
「なりません!」
「すがりついてでもお止め申し上げます!」
「おのおのよく聞かれよ!」
「はっ!」
「今川の武者どものは昨日の宵に兵糧をとって、夜通し大高へ兵糧を運び、鷲
津、丸根に手を焼き疲労しきっている」
「…」
「それに比べてこちらは新手の兵だ」
「…」
「そして、『小勢だからといって大敵を恐れるな。運は天にあり』という言葉を
知らぬのか!」
「…」
「敵が攻撃してきたら退き、退いたら追撃せよ! なんとしても敵を圧倒し追
い崩せ! たやすいことだ」
「おぉ!」
「分捕りをするな! 打ち捨てにせよ!」
「ははっ!」
「戦いに勝ちさえすれば、この場に参加したものは家の面目、末代までの功名
になるぞ! ひたすらに励め!」
「うぉぉぉぉ!」
「お館様、又左衛門参上!」
「毛利十郎参上!」
「中川金右衛門参上!」
「森小介参上!」
「魚住隼人参上!」
「おぉ、よくぞまいった。」
信長は手に手に敵将の首を持って来た彼らにも同じことをいちいち話して聞か
せた。
いよいよ桶狭間の合戦が始まろうとしていた。
<参考文献>
ニュートンプレス:信長公記(太田牛一:原著 榊原潤:訳)
角川ソフィア文庫:信長公記(奥野高広、岩沢愿彦 校注)
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*このページは信長公記との違いや、さらに詳細な説明が書かれています。
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