第20話 桶狭間の合戦3〜今川義元の最期〜
「どうやら一雨来そうだな」
ザザァァァァァァァァァァァァ……
「すごい雨だ、まるで石や氷を投げつけているようだな」
「誠でございます。しかも、今川方へ向かって降りつけておりまする」
「うむ、わが方には後ろから降りつけておるな」
バ、バキバキッ
ドサァァァ
「おぉ! 二かかえも三かかえもあるくすの木がこの雨と風で東の方に倒れま
したぞ!」
「すごい風雨だ!」
「もしや、こたびのいくさは熱田大明神の神軍(かみいくさ)なのだろうか!」
「そうだ、そうだ! これは大明神のご加護があるぞ!」
ズザァァァァ……
ザァァ…
ザァ…
…
「雨が止みましたな」
雨も収まり、雲の切れゆくようすをながめていた信長。
おもむろに槍をとり大音声で、
「すわ、かかれ! かかれ!」
「おぉ!」
黒煙をあげて攻めかかる信長勢。
「あ、あれは?」
「ま、まさか!?」
「あの木瓜(もっこう)の旗印は…」
「お、織田の兵だ!」
「に、逃げろぉ!」
「うわぁぁぁぁ」
突然の織田軍の出現は、今川方を驚かし、水を撒き散らしたようにあわてふた
めき、後ろにわっと崩れ立った。
「お館様! 敵は弓・槍・鉄砲・のぼり・指物などを捨てて逃げ惑っておりま
すぞ。まさに算を乱して逃げるとはこのことでありますな」
「おっ、あそこに義元の輿も打ち捨ててありますぞ!」
「よし、義元の旗本はあれだ! あれに向かって攻めかかるのだ!」
「おぉ!」
ときは午後2時。
ついに、大将今川義元を発見した信長。
見ると300騎ばかりの旗本が今川義元を中に囲んで輪になって退いていた。
「義元はあれぞ! 物ども、かかれ! かかれ!」
二度、三度、四度五度と攻めかかるうちに、義元側の旗本は討たれ、ついには
50騎ばかりを残すばかりになってしまった。
「あっ! お館様!」
見ると信長も馬から降り、若武者どもと先を争い、敵を突き伏せ、突き崩す!
「お館様に続け!」
血気にはやる若者たちも、負けじと乱れかかってしのぎをけずり、刀のつばを
わって、火花を散らし、火炎をあげて戦った。
「義元覚悟!」
「うわぁ!」
「ぐわっ!」
服部小平太は義元に打ちかかり、逆にひざ口を切られて倒れる。
ザシュッ!
「ぐっ、むぅ…」
「毛利新介、今川義元、討ち取ったり!」
「うぉぉぉぉぉぉぉ!」
「義元様が討ち取られたぞ! 逃げろ!」
桶狭間は土地が低く入りくんでおり、草木が高く低く茂った難所。
深田へ逃げ込んだ敵兵が、ところかわらず這いずり回っているところを、信長
方の若武者が追いついては討ち殺し、手にはそれぞれ2つ、3つずつと首を持
って信長の前にやってくる。
「首は清洲に戻ってからゆっくり実検いたす」
「お館様! 義元の首でございます!」
「うむ、新介、ご苦労」
義元の首だけを見た信長は満足した様子で、来た道を通って清洲に戻った。
<参考文献>
ニュートンプレス:信長公記(太田牛一:原著 榊原潤:訳)
角川ソフィア文庫:信長公記(奥野高広、岩沢愿彦 校注)
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*このページは信長公記との違いや、さらに詳細な説明が書かれています。
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