第27話 斎藤道三死す

 四月二十日午前八時。

 「かかれっ!」

 義竜の号令のもと、西北にむかって軍勢が繰り出される。

 「進めっ!」

 道三も鶴山を下り、長良川の縁まで軍兵を出した。

 「竹腰道塵、参る!」

 まずは、義竜方の竹腰が600の兵とともに長良川を渡り道三に切りかかった。
 
 キィーン
 
 敵味方入り乱れて戦い、刀のぶつかる音があたりに響きわたる。

 「竹腰道塵、討ち取ったり!」

 「でかしたっ! はっはっはっ! 新九郎め、慌てておるだろう」

 そういって、床机に腰掛け、母衣(ほろ)をゆすって満足げに笑う道三。

 「申し上げます! 二番槍として新九郎自ら多数の兵とともに川を渡ってきて
  おります!」

 「そうか。兵を整えろ! 迎え討つのだ!」

 「はっ!」

 そのとき、義竜の陣から武者が一騎飛び出してきた。

 「われの名は、長屋甚右衛門! われこそはというものは進み出よ!」

 「おぅ! ならばこの柴田角内がお相手いたそう!」

 「望むところよ!」

 みなの見ているまで、二人は渡り合った。

 「えいっ!」

 「ぐわっ!」

 「長屋甚右衛門、討ち取ったり!」

 一騎打ちの後も両軍とも刀のしのぎをけずりつばを割る激しい戦いが繰り広げ
 られた。

 「そこにおられるのは、山城道三様とお見受けした。いざ、尋常に勝負!」

 「若造が猪口才な!」
 
 長井忠左衛門は道三と渡り合い、道三が打ち下ろす太刀を押し上げてむんずと
 組み付き、道三を生け捕りにしようとした。

 「道三、覚悟!」

 そこへ荒武者の小真木源太が走りより、道三のすねを打ち払った。

 「ぐむっ」

 すねを払われた道三は、ついに押し伏せられ首を取られた。

 「山城道三、この長井忠左衛門が討ち取ったり!」

 あたりに道三討ち死にの声が響き渡る。

 「悪く思われるなよ」

 ザシュッ

 そして、忠左衛門は、後の証拠にと道三の鼻をそいで引き上げた。
 
 「新九郎様、山城道三、討ち死にしたとのことでございます」

 「…そうか」

 「こちらが首でございます」

 「…父上」

 鼻をそがれた父の首を見た新九郎は目をそらした。
 
 「わしはなんということをしてしまったのだ」

 「新九郎様…」

 「わが身から出た罪とはいえ、わが父を殺す羽目になってしまうとは…」

 「…」

 「隼人正、わしは出家いたす」

 「なんとっ!」

 「そうでもしないとわしの気が晴れぬ」

 こうして斎藤新九郎義竜は、出家をし、新九郎范可(はんか)と名乗った。

 <参考文献>
 ニュートンプレス:信長公記(太田牛一:原著 榊原潤:訳)
 角川ソフィア文庫:信長公記(奥野高広、岩沢愿彦 校注)
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 【キリのコメント27】 

 *このページは信長公記との違いや、さらに詳細な説明が書かれています。
  お時間に余裕がございましたら、ご覧ください。

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