「キャリー」
キャリー 1976・米
キャリー

製作:ポール・モナシュ
監督:ブライアン・デ・パルマ
原作:スティーブン・キング
脚本:ローレンス・D・コーエン
撮影:マリオ・トッシ
音楽:ピノ・ドナジオ

出演:シシー・スペイセク
    パイパー・ローリー
    ジョン・トラボルタ
    ナンシー・アレン
    エイミー・アービング
    ウィリアム・カット
    ベティ・バックレイ
    P・J・ソールズ


キャリーは念力で鏡を割る

キャリー(シシー・スペイセク)と母親(パイパー・ローリー)

ナンシー・アレンとジョン・トラボルタ

教師がスーたちに事情を聞く

キャリーとトムはベストカップルに選ばれた

豚の血で全身が血まみれになるキャリー

豚の血で全身が血まみれになるキャリー

キャリーが睨むと・・・

パーティ会場が火に包まれた

キャリーの家が崩壊する

キャリー

物語

メイン州チェンバレンのハイスクールに通うキャリー(シシー・スペイセク)は冴えない容姿と内気な性格からクラスメイトから馬鹿にされていた。

ある日、バレーボールの授業の後、シャワーを浴びていたキャリーが突然悲鳴を上げた。股間から血が流れてきたのである。
それが初潮だと知らないキャリーは恐れおののき騒ぎ立てる。クラスメイト達はこのときとばかりタオルを投げつけ生理用品を投げつけキャリーをからかった。キャリーは恐怖にうずくまるばかりだった。キャリーは校長室に呼ばれ、そのまま早退を許可された。

「死ぬかと思ったわ、何故教えてくれなかったの」 キャリーは母親マーガレット(パイパー・ローリー)に詰問したが熱狂的なキリスト信者である母親は性を罪悪視しており堕落した人間の罪というばかりでキャリーの訴えに耳を貸さない。

担任の教師デジャルダンはキャリーをからかった生徒を集め説教した。近く開催されるダンスパーティへの参加を禁止する。それがいやなら毎日居残りで体育授業を行うというものだ。渋々同意した生徒達だが、いじめの中心人物のクリス(ナンシー・アレン)は過酷な授業に耐えかね授業を放棄してしまった。

いじめに参加していたスー(エイミー・アービング)は罪ほぼろしとしてボーイフレンドのトミー(ウィリアム・カット)に自分の替わりにキャリーをパーティに誘うよう依頼する。トミーは戸惑うが結局キャリーを誘う。
キャリーはトミーを断るが家にまで押しかけてきて誘うトミーにOKの返事をした。
キャリーの母親マーガレットは「生理になった途端、今度は男かい」とキャリーに軽蔑の目を向ける。
「約束したのよ!」 キャリーは母親に初めて反抗したのだ。

一方、パーティへの参加を禁止されたクリスはキャリーを逆恨みし、笑いものにしてやろうとボーイフレンドのビリー(ジョン・トラボルタ)と悪巧みを画策していた。ビリーは養豚場へ行き、豚の血をバケツ一杯持ち帰った。このバケツをパーティ会場に仕掛ける計画だった。

担任のデジャルダンはトミーがキャリーを誘ったことに違和感を感じていた。

高校生最後のダンスパーティだった。華やかに飾り付けられたパーティ会場。
キャリーは自分で作ったドレスを着てトムと会場に現れた。会食の後てんでにダンスを踊り始めるカップルたち。
「踊ろうよ」 トムの誘いにキャリーは躊躇う。ダンスを踊ったことが無い。それでもキャリーは誘いに応じた。
「上手だよ」 トムはほめてくれた。キャリーとトムの周りを人々の目が追う。
キャリーは生まれて初めての幸福感に浸っていた。キャリーとトムは見つめあう。この瞬間にお互いに恋心が芽生えていた。
最後にベストカップルの投票が行われた。クリスは投票に仕掛けをしキャリーとトムがベストカップルに選ばれた。
キャリーはトムに手を引かれステージに上がった。皆に祝福され司会者からベストカップルの発表があり、キャリーは幸福の絶頂にいた。

その時、ステージの裏側まで様子を見に来ていたスーはステージの脇に張られているロープを発見した。ロープはステージの上に伸びキャリーの真上のバケツに繋がっている。ロープの下はステージの裏側まで伸びている。そこにクリスが潜んでいた。
パーティを見に来ていた教師デジャルダンはステージの脇にいたスーの様子が変なのに気づく。

その時だ。クリスがロープを引いた。キャリーの真上から夥しい血が降りかかった。豚の血だ。キャリーは全身血でまみれた。何が起きたか瞬間理解できなかった。トムの頭にバケツが落ちトムが倒れる。
キャリーを見てパーティ会場の全員が騒然とし、ある者は笑いある者は騒ぎ出した。
キャリーの中で何かが弾ける。キャリーは精神を集中させると物体を動かしたり火をつけることができる念動能力(テレキネシス)の持ち主だったのだ。
キャリーが目を向けた場所に火がつく。キャリーが目を向けたドアが窓が音を立てて閉まる。あちこちに火が噴出した。消火用のホースが勝手に暴れだし大衆に水を放ち始める。会場は阿鼻叫喚となった。
教師デジャルダンまでもが犠牲となる。殆どの学生達は火に包まれた。

会場が火の海になった。呆然と会場を出てきたキャリー。街を歩いていくキャリーの背後から一台の車が猛スピードで突進してきた。クリスとビリーの車だ。
キッと車をキャリーが睨みつける。すると車はキャリーを避け横転し炎上した。

家に帰ったキャリーは家の中のあらゆる場所に蝋燭が燈っているのを見た。母親の姿が見えない。
血だらけのキャリーはバスに入り体を洗い清めた。そして母親を探して家中を歩く。ドアの背後にいきなり母親マーガレットが現れた。キャリーは母親に抱きついた。屈辱を母に訴えたかった。
「懺悔しなさい」 マーガレットはそう言いながらキャリーを抱きしめる。キャリーは頷いた。
だがいつの間にかマーガレットが包丁を手にしてキャリーの背中を刺したのだ。「穢れた人間は罰を受けるのよ」。キャリーは階段を転がり落ちた。
マーガレットが包丁を手に階段を降りてくる。そしてキャリーに向かい包丁を振り上げた。その時、キャリーの目がキッと光った。キッチンに下がっている包丁やナイフが空中を飛びマーガレットに突き刺さった。
キャリーは母親を殺してしまった。キャリーにはもはや何も残っていない。母親を床に横たえると家に火を放った。家の中がひび割れ家全体が崩れていった。

瓦礫の中に十字架が立っている。キャリーの名が刻まれたキャリーの墓地だ。スーが近づいていく。スーは生き残ったのだ。スーが花束をキャリーの墓地にそっと置いた。瞬間、瓦礫の中から血にまみれた腕が伸びてスーの腕を掴んだのだ。
悲鳴を上げるスーは悪夢を見たのだった。母親に抱かれても悲鳴を上げ続けるスー。
映画館主から

ブライアン・デ・パルマ監督が放ったオカルト映画の大ヒット映画。
単純なストーリーながらショッキングなシーンのオンパレードです。
原作はスティーブン・キングの処女作です。

厳格なキリスト教伝道者の母に育てられたキャリーの鬱屈した青春。女性が年頃になると初潮を迎えることさえこの母親は娘に教えていなかったのです。
母親はセックスを毛嫌いし、男との交際も汚らわしいものとキャリーに叩き込みます。その結果、キャリーは自分の特殊な能力を爆発させるのでした。
キャリーは手を触れずに物を動かせることが出来る念動能力(テレキネシス)の持ち主だったのです。
キャリーが意識を集中させると物体が動き、火を放つ。まるで宮部みゆきの超能力小説の主人公のように。

クラスメイトの意地悪な女子高生たちがキャリーの復讐によって惨劇の渦に巻き込まれる場面ではキャリーに感情移入していた観客は快感さえ覚えたものでした。やれ、もっとやれ!と。

キャリーを演じたシシー・スペイセクと狂信的な母親役のパイパー・ローリーは共にアカデミー主演女優賞、助演女優賞にノミネートされましたが、同年の「ネットワーク」のフェイ・ダナウェイ、ベアトリス・ストレイトに譲りました。

キャリー役のシシー・スペイセクはまだ新人でしたが「歌えロレッタ!愛のために」(’80年)でアカデミー主演女優賞に輝いています。
本作でキャリーをいじめる悪役のナンシー・アレンはデ・パルマ監督と’80年に結婚し、デ・パルマの「殺しのドレス」に主演、3年後に離婚しています。
エイミー・アービングはデ・パルマの「フューリー」では超能力少女役で出演しています。彼女もスティーブン・スピルバーグと結婚し、やはり離婚しています。
ちょい役のジョン・トラボルタは本作の翌年ダンス映画「サタデー・ナイト・フィーバー」(’77年)で大ヒットを飛ばしスターの仲間入りを果たします。

デ・パルマ監督の持ち味であるスローモーションやコマ落としがおどろおどろしく、又、時に効果的に使われています。
惨劇の血がこれほど多く出てきたのは本作が最高でしょう。なにしろキャリーが全身豚の血を浴びるのですから。
又、キャリーとトムが寄り添ってダンスを踊るシーンでは二人の周りをぐるぐるカメラが回ります。「愛のメモリー」(’76年)のラストシーンでも使われた手法ですが、これは明らかにヒッチコックの「めまい」(’58年)の影響でしょう。

キャリーはパーティ会場の殆ど全員を焼き尽くし、家に帰って母親を殺害、家と共に自らも滅ぼしてしまいます。家が崩壊する様はポーの小説「アッシャー家の崩壊」を彷彿とさせます。

ラストのラストでデ・パルマはショッキングなシーンを用意しています。心臓が止まるほどのショックです。これは後年の「殺しのドレス」(’80年)に似ています。

本作は大ヒットしました。続いて発表した「フューリー」(’78年)の方が私は気に入っていますが、「キャリー」のようには受けませんでした。

参考文献:ローラン・ブーズロウ著「デ・パーマ・カット」 キネマ旬報社

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