「切腹」
仲代達矢映画
炎上 炎上(’58大映)

監督:市川 崑

共演:市川雷蔵
    中村雁治郎
    新玉三千代
    中村玉緒
三島由紀夫の小説「金閣寺」を市川 崑が監督した。

この世で一番美しいものは金閣寺の建築だと亡父から教え込まれた青年は、深い憧憬から金閣寺の徒弟となるが、戦後は訪れる観光客で寺は俗にまみれる。
師と仰ぐ住職は戒律を犯して女色に溺れ、青年は不信と絶望感のに追い詰められる。
ついに寺に放火した青年は囚われの身となり護送の途中、列車から飛び降りて死ぬ。

雷蔵始めての現代劇で、その演技が認められキネマ旬報主演男優賞、ブルーリボン賞主演男優賞などを受賞した。

仲代は友人で脚の悪い戸刈役を好演した。
人間の条件 人間の条件 6部作
(’59〜’61にんじんくらぶ=松竹

監督:小林正樹

共演:新玉三千代
    山村 聰
    淡島千景
    佐田啓二
    小沢栄太郎
    川津祐介
    多々良純
    藤田 進
    中村玉緒
五味川純平の同名小説の映画化で、小林正樹にとってもライフワークになった。全編で9時間38分という長尺。

自分の生き方に忠実であるあまり、戦争の渦中に身を投じなければならない男が愛する妻と引き裂かれ、戦争にも同化しえない苦悩を背負いながら生き抜いていく様が力強い演出で描かれる。

初めての大作に抜擢された仲代は主人公の梶を陰影深く演じぬいた。

用心棒 用心棒(’61東宝)

監督:黒澤 明

共演:三船敏郎
    山田五十鈴
    東野英治郎
    加東大介
    志村 喬
    藤原釜足
二人の親分がいるためにゴーストタウンのようになってしまった宿場町に得体の知れない桑畑三十郎と証する浪人がやって来た。
双方に用心棒として雇わないかと持ちかける。
やがて巧みに双方を争わせ街を大掃除した浪人は何処とも無く去っていく。

殺陣シーンの凄まじさ、ユーモラスなタッチ。ピストルを持ったキザでニヒルな仲代の登場も存在感があった。
セルジオ・レオーネが作ったイタリアで本作の翻案・「荒野の用心棒」も大ヒットした。
椿三十郎 椿三十郎(’62黒澤プロ=東宝)

監督:黒澤 明

共演:三船敏郎
    加山雄三
    入江たか子
    伊藤雄之助
    団 令子
    志村 喬
    小林圭樹
原作は山本周五郎の「日々平安」。「用心棒」の続編の装いである。

上役の汚職を暴こうとする九人の若侍の見方になる三十郎は知恵比べ、腕比べを駆使して悪の根を絶つ。

敵方の剣客・室戸半兵衛を演じた仲代は凄みがあり、ラストの決闘シーンは映画史に残る名場面といえる。
切腹 切腹(’62松竹)

監督:小林正樹

共演:三國連太郎
    岩下志麻
    丹波哲郎
    石浜 朗
    三島雅夫
    中谷一郎
    佐藤 慶
    稲葉義男
    井川比左志
武家社会の非人間性、権力者の体面を取り繕う偽善性を“切腹”という題材で痛烈に批判した小林正樹初の時代劇作品。

彦根藩邸で津雲半四郎(仲代)と名乗る男が、生活に困窮し、いっそ武士らしく切腹して果てたいと名乗り出た。
どこの屋敷でも庭先を血で汚されてはかなわないので幾ばくかの金を与えて追い払う。
いわばこれは強請りたかりであった。
家老(三國)は切腹させようとするが・・・

橋本忍のシナリオが素晴らしい。

カンヌ映画祭審査員特別賞受賞。
天国と地獄 天国と地獄(’63東宝)

監督:黒澤 明

共演:三船敏郎
    香川京子
    木村 功
    山崎 努
    三橋達也
高台の豪邸を構える製靴会社の権藤の子供と間違えてお抱え運転手の息子が誘拐された。
権藤は悩んだ末、全財産の三千万円の身代金を払い子供を助け出す。
警察の捜査が始まり、一人の知能犯の青年が浮かび上がった。

全編息詰まるサスペンス。特に鉄橋を利用した身代金の受け渡しシーンは秀逸で、実際に模倣した事件が発生した。

仲代は犯人を追い詰める刑事役。
怪談 怪談(’64文芸プロ=にんじんくらぶ)

監督:小林正樹

共演:岸 恵子
    三國連太郎
    新玉三千代
    渡辺美佐子
    中村賀津雄
    丹波哲郎
    
小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)が描いた日本的民話を独特の造型感で映画化した。
小林正樹が初めて取り組む色彩作品。

「黒髪」「雪女」「耳なし抱一の話」「茶碗の中」の4話のオムニバス。
仲代は「雪女」の中の巳之吉役。

ダリを想起させる意表をついた映像感覚だったが成功作とは言い難かった。
他人の顔 他人の顔
(’66東京映画=勅使河原プロ)

監督:勅使河原宏

共演:京マチ子
    入江美樹
    平幹二朗
    岸田今日子
    岡田英次
安部公房原作の不条理劇。

過失から顔に大火傷を負った男が、妻が自分を拒んだこともあり、医者にまったく他人の顔を作ってくれと依頼する。
その顔で妻を誘惑し姦淫する。
平然と応ずる妻を男はなじるが妻は夫と知っていた。
男は人間の本当の自由とは何かという問題に突き当たり、「君は完全に自由だ」と言った医者を殺してしまう。

抽象的で分かりにくいと言われながら「砂の女」同様に評判を呼ぶのは勅使河原作品が人間の本質を突くものがあるからだ。
人斬り 人斬り
(’69 フジテレビジョン=勝プロ)

監督:五社英雄

共演:勝新太郎
    石原裕次郎
    三島由紀夫
    倍賞美津子
    辰巳柳太郎 
    仲谷 昇
    山本 圭
    伊藤孝雄
    田中邦衛
五社英雄監督がダイナミックかつエネルギッシュに演出したテロルの美学。

岡田以蔵(勝)は天才的な剣の腕を見込まれ土佐勤皇党に迎えられた。そして期待通りの動きで『人斬り以蔵』と恐れられる。
だが犬意識を持ち始めた彼は既に無用の長物でしかなかった・・・
田中新兵衛役の三島由紀夫が圧倒的な存在感を示したが、この映画の翌年、市谷自衛隊に乗り込みアジ演説の後、割腹自殺を遂げるという衝撃的な事件が起きた。
裕次郎は坂本竜馬役であった

仲代は武市半平太役であった。
影武者 影武者(’80黒澤プロ=東宝)

監督:黒澤 明

共演:山崎 努
    萩原健一
    根津甚八
    大滝秀治
    倍賞美津子
    桃井かおり
    隆 大介
    志村 喬
    藤原釜足
黒澤明が「どですかでん」以来10年ぶり、久しぶりに時代劇を撮ったとして話題になった作品で、カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞した。

あやうく処刑を免れた盗人が似ているとのことで武田信玄の影武者に仕立てられた。
敵味方双方に疑心暗鬼が生まれ影武者は追い詰められていくが・・・。

仲代が信玄と影武者の二役を演ずるが、私は当初の配役の勝新太郎が適役だったと思う。
乱
(’85ヘラルド・エース=仏)

監督:黒澤 明

共演:植木 等
    隆 大介
    原田美枝
    ピーター
    寺尾 聰
    根津甚八
シェイクスピアの「リヤ王」を戦国時代の毛利3兄弟の話に翻案して描く豪華絢爛たる戦国絵巻。

年老いた一文字家の主・秀虎(仲代)が三人の息子に家督をゆずり城を一つづつ与えて引退するところから起こる、息子たちの反逆と骨肉の争い。
やがて秀虎は発狂し、息子達も死んでいく。

米アカデミー衣装デザイン賞受賞(ワダ・エミ)
映画館主から

「用心棒」や「椿三十郎」で主演の三船を圧倒するほどの存在感を示した仲代達矢は、「用心棒」で黒澤からのオファーが来たときに仲代は当初断ったといいます。
何故なら「七人の侍」での街道を歩くだけのシーンに出演した仲代に何度も何度もやり直しを命じた黒澤を嫌ったからでした。
台詞もない数秒歩くだけの武士のシーンにこだわる黒澤には付き合いきれないというものでしたが、結局出演して正解でした。
「用心棒」の仲代は首にマフラーを巻き拳銃を構える気障なヤクザ者といういでたちで見るものを圧倒したのでした。続く「椿三十郎」では風格のある武士役で三船と対決し、ラストの壮絶な決闘シーンは語り草にもなっています。以後、黒澤映画には欠かせない役者となったのです。

仲代の映画で私の一押しは「切腹」です。
橋本忍の名脚本を得て小林正樹の演出は際立っていました。

仲代は俳優座出身で後に「無名塾」を主宰し行進の育成に努めながら舞台での活躍も多い。日本を代表するシェイクスピア俳優でもあります。映画、舞台と活躍する点で平幹二朗と双璧といえます。

仲代には“眼力”があります。俳優座養成所時代の仲代の舞台を見た月丘夢路の「私よりもっと凄い眼力のある人がいる」との推薦で月丘の夫・井上梅次監督の「火の鳥」で月丘の相手役という大役をつとめ本格デビューを果しました。
3年後には「人間の条件 6部作」の主演に抜擢され、押しも押されもしないスターの仲間入りを果すのでした。

貧しい家庭に育った仲代は高校卒業後は定職に就かず警備員やボクシングの3回戦ボーイの職にありつくなどして映画館や芝居見物に通ううち、俳優座公演で千田是也の演技に感銘を受け、1952年に俳優座養成所に第4期生として入所。同期に佐藤慶、佐藤允、中谷一郎、宇津井健がいたそうです。

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