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「聖衣」 |
| 聖衣 1953・米 | |
![]() 製作:フランク・ロス 監督:ヘンリー・コスター 原作:ロイド・C・ダグラス 脚本:フィリップ・デューン 撮影:レオン・シャムロイ 音楽:アルフレッド・ニューマン 出演:リチャード・バートン ジーン・シモンズ ビクター・マチュア マイケル・レニー ジェイ・ロビンソン リチャード・ブーン アーネスト・セジガー マイケル・アンサラ ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |
物語 ローマは今、タイベリアス皇帝(アーネスト・セジガー)が統治していた。
奴隷市場でのことである。そこでは男、女、子供、様々な奴隷が売られている。
若い貴族の護民官マーセラス(リチャード・バートン)は突然走ってきた男を見た。奴隷が脱走してきたのだ。マーセラスは男を殴り倒し追ってきた商人に引き渡した。 マーセラスは、次の皇帝を継ぐことになっていたキャリグラ(ジェイ・ロビンスン)と競って、奴隷デミトリアス(ビクター・マチュア)を買い取った。その男は先ほど脱走してきた男だった。
デミトリアスは筋骨隆々の逞しい奴隷だった。だが、キャリグラはマーセラスを怨んで彼をエルサレムへ左遷してしまった。
デミトリアスはマーセラスの好意で自由の身となりマーセラスに従ってエルサレムについて来た。
エルサレムでは最近、神の子と称する男が丘の上で民衆を集めては何やら扇動しているという噂が立っていた。
マーセラスのエルサレムでの最初の仕事はその男を逮捕し処刑することだった。
男はイエス・キリストという名前で、人々から救世主と呼ばれていた。
デミトリアスはイエスを守ろうと奔走した。だが、信者の一人ジュダ(マイケル・アンサラ)の裏切りでイエスは逮捕された。エルサレムのピラト総督(リチャード・ブーン)はイエス・キリストに死刑の判決を下した。 マーセラスが馬に乗り先頭を行く。街をイエスが十字架を担いで歩く。哀れむ人々がその周りをイエスと共に歩いていた。
イエスは足から血を流しながらよろめきながら歩く。遂に力尽き道に倒れた。イエスに兵隊の鞭が飛ぶ。デミトリアスが兵隊に襲い掛かったが別の兵隊に倒されてしまう。
丘の上の処刑場ゴルゴダの丘。イエス・キリストが自ら担いできた十字架に架けられた。手を釘で打ち付けられぶら下がっている。
デミトリアスがそれを見上げる。マーセラスが見上げる。
天の気配が異様だった。あたり一面暗くなった。
「主よ、許したまえ。彼らは知らないのです」 イエスの声が聞こえてきた。そしてイエス・キリストは力尽きた。
十字架の下にイエスが纏っていた赤い衣があった。デミトリアスはそれを持ってきた。
マーセラスは何故か良心の呵責に慄いていた。デミトリアスが持ってきた衣を纏おうとした時、打ちのめされたような衝撃が全身を襲った。
「あの方を十字架にかけた!もはや貴方は主人ではない!」 デミトリアスが悲痛に叫んで走り去る。
マーセラスは以来、平常心を失い酒におぼれるようになった。
役目を解かれたマーセラスはローマに帰った。
そこで幼馴染のダイアナ姫(ジーン・シモンズ)と再会し心の平安を得た。マーセラスは幼い頃ダイアナに結婚の約束をした。マーセラスは忘れていたがダイアナはしっかりと覚えていた。
だが、キャリグラはダイアナを自分の正妻にしたいと望んでいたのだ。
タイベリアス皇帝はマーセラスにイエスが真の救世主であるか調査を命じた。
そこでマーセラスはガラリア地方に赴いた。そこでイエスの教えを説くという漁夫ペトロ(マイケル・レニー)と語らい、デミトリアスとも再会した。
マーセラスはイエスの教えに心服し、信者になるのだった。
ローマに帰るとタイベリアスは既になく、キャリグラが皇帝に即位していた。
キャリグラはキリスト教を弾圧していた。まずデミトリアスを捕まえ拷問にかけ、マーセラスの居所を知ろうとしていた。
マーセラスは城に忍び込みデミトリアスを救い出したが、自らは捕らえられ反逆罪に問われた。
彼は信仰をあくまでも捨てず、ダイアナも従った。二人は殉教者として死の道を選んだのだ。刑場に向かうマーセラスとダイアナの顔は穏やかに輝いていた。
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| 映画館主から 横長大画面のシネマスコープ映画の第一作がこの「聖衣」です。
スケールの大きい聖書劇がシネマスコープ第一作に選ばれたのは意義深いものがあります。
ただし、「聖衣」にはそれほどの戦闘場面があるわけでなく、実に静かな宗教映画になっています。キリストを処刑した男が次第にその教えに惹かれていき、キリスト教弾圧により死刑になる話です。
ラストで刑場に赴くリチャード・バートンとジーン・シモンズの二人は達観したようなどこか穏やかな表情になっています。
これを見て「近松物語」のラスト、刑場への引き回しで馬に乗せられた長谷川一夫と香川京子の姿に重ね合わせてしまいました。
主演のリチャード・バートンはイギリスの舞台俳優出身です。シェークスピア劇を何本も演じてからの映画進出ですから演技には定評があり、凄みさえ感じさせます。
後年、「クレオパトラ」(’63年)で共演したエリザベス・テーラーと何度も結婚・離婚を繰り返したことでも知られています。
相手役のジーン・シモンズは「大いなる遺産」(’46年、監督:デビッド・リーン、主演:ジョン・ミルズ)や、「ハムレット」(’48年、監督・主演:ローレンス・オリビエ)で新鮮な演技を見せての本作への抜擢でした。
以後、「大いなる西部」(’58年、監督:ウィリアム・ワイラー、主演:グレゴリー・ペック)、「スパルタカス」(’60年、監督:スタンリー・キューブリック、主演:カーク・ダグラス)など大作映画に欠かせない美人女優でした。
奴隷のデミトリアスを演じたのは「荒野の決闘」(’46年、監督:ジョン・フォード、主演:ヘンリー・フォンダ)でのドク・ホリディ役で注目され、「サムソンとデリラ」(’49年、監督:セシル・B・デミル)で聖書劇の主役を演じたビクター・マチュアです。
筋骨隆々の逞しい体格はまさに本作にピッタリでした。本作の翌年には彼の主演で続編「ディミトリアスと闘士」が製作されています。
本作は映画としては余り成功した作品とはいえないと思いますが、1953年度の全米興業成績第一位で大ヒットを記録。
アカデミー賞も美術賞、衣装デザイン賞を獲得しています。
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